top of page

名もなき者

=2時間20分

長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で2月28日(金)から公開

(C)2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

若きボブ・ディラン 音楽界の寵児描く

 「米国音楽の偉大な伝統の中に新たな詩的表現を創造した」として2016年のノーベル文学賞に輝いた歌手のボブ・ディラン。「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」は、1962年にデビューし、メッセージ色の強い歌で社会に大きな影響を与えてきたボブ・ディランの若き日を描いた伝記映画だ。


 故郷ミネソタからヒッチハイクでニューヨークにたどり着いた19歳のボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)は人気シンガーのピート・シーガー(エドワード・ノートン)や大物プロデューサーに才能を認められ、プロのフォークシンガーとして道を歩み始める。公民権運動に熱心なアーティスト、シルヴィ(エル・ファニング)と出会い恋におちるが、その一方でディランの歌に心を揺さぶられた「フォークの女神」ジョーン・バエズ(モニカ・バルバロ)とも、愛を交わすようになるのだった。


 ギターやハーモニカの演奏、ボイストレーニングなど5年かけて習得したシャラメは、劇中の歌唱シーンを全て自身でこなし、その演技を超えたライブパフォーマンスはディラン本人が認めるほど。「風に吹かれて」をはじめ名曲が次々と流れ、音楽映画の魅力が堪能でき、1960年代の反戦運動や公民権運動など、社会的、政治的、文化的な時代の変革も映し出される。


 鋭い感性で音楽界の寵児となったディランの世界を鮮やかに描き出すのは、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でジョニー・キャッシュの栄光と苦悩をたどった名匠ジェームズ・マンゴールド監督。米アカデミー賞では作品賞、監督賞、ティモシー・シャラメが主演男優賞、エドワード・ノートンが助演男優賞、モニカ・バルバロが助演女優賞など8部門にノミネートされている。


 映画タイトルは、ローリング・ストーン誌が史上最高の名曲に選んだ「ライク・ア・ローリングストーンズ」の一節から付けられた。「名もなき者」だったディランは、常に新たな世界を目指し人々に大きな影響を与えるカリスマとなった。アメリカ文化への多大な影響をもたらしたとしてピュリツァー賞特別賞も受賞している。彼がなぜノーベル文学賞を受賞したのか。その原点がここにある。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年2月15日号掲載

 © weekly-nagano  All rights reserved.

bottom of page