会社では上司が部下を評価する査定が定期的に行われ、それにより昇格や降格が決まります。
スポーツや音楽、演劇などの団体で、監督などは複数の人が取り合うポジションについて誰を選び、誰を外すか判断します。
このような状況をはた目から見て、「過大評価し過ぎだ」または「過小評価し過ぎだ」と感じることがありませんか。プロ野球で、実力選手なのになぜトレードに出されるの?とファンが驚くケースなどです。
上司や監督が人を公正に評価するのは難しく、時には「再認ヒューリスティック」が影響します。ヒューリスティックとは直観的判断といった意味。「既に知っているものに対しては、初めて見聞きするものより、高い評価を与える」という心理的バイアス(偏向、先入観)が働くのです。人の評価にこの心理が働くのは、評価する人とされる人の性格が似ている場合でしょう。
米国ノースウェスタン大学では150万人の調査結果をビッグデータ解析し、人の性格は四つのタイプに分類できることを発見しました。上司が部下を評価する際に、確率でいえば4人に1人は自分と似た思考回路で行動する部下がいることになり、その部下が成果をあげる様子を見た上司は、自分自身の経験と重ね合わせて評価するかもしれません。上司が既に体験している成功パターンであれば、高く評価する可能性は高いでしょう。
もちろん上司や監督は、先入観を排除して正しく評価するよう努めるでしょう。しかし、心理的バイアスは無意識に働くものなので、注意深くしなくてはなりません。
この心理的バイアスは、他人を評価する時、すべての人に関係します。例えば、大人が子どもをしかる時、地域コミュニティーの世話役が助言をする時など、日常の生活場面で再認ヒューリスティックによって、人間の評価を誤る可能性があります。
誰しも、不当に低く評価されれば傷つきます。評価する人はくれぐれも、無意識に働く心理的バイアスが正しい評価の邪魔をすることを理解し、人の価値を測ることの重みを感じるべきなのです。
(マーケティングコンサルタント)
(2020年7月25日掲載)