絶景見て日本の真ん中へ
野山が新緑に輝き始めた4月下旬の土曜日、山仲間3人で辰野町の大城山(おおじょうやま)=王城山(1027メートル)と鶴ケ峰(1277メートル)に出かけた。
大城山からは伊那谷北部を一望。鶴ケ峰には列島の真ん中を表す「日本中心の標」があり、山頂の展望塔からは360度の眺めが広がっていた。
7時に長野市内を出発。曇っていたが、長野道一本松トンネルを抜けると青空が広がった。中央道伊北インターを出て、国道153号を北上。町立辰野病院の先から林道に入り、わずか上ると大城山の登山口に。
9時前にスタート。うっそうとした杉林を抜け、赤松林に入る。足元には至る所に赤みが濃いスミレが咲いている。40分ほどで頂上に出た。
パラグライダーの発進基地でもある芝生の広場だ。左には甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳など南アルプス、右には木曽駒ケ岳、将棋頭山(しょうぎがしらやま)など中央アルプスの山並み。眼下には町中心部と伊那谷が広がる。
大休止の後、鶴ケ峰へ向かう。大城山の直下には駐車場があり、林道を走れば鶴ケ峰の先まで車で行けるが、登山道を歩く。「一杯水」という水場を過ぎると、その先が「日本中心のゼロポイント」への分岐だ。
緯度と経度が00分00秒で交わる地点がゼロポイント。ここは北緯36度、東経138度ちょうど。約40ある国内のゼロポイントの中でも中心に位置するという。
ここへは帰りに寄ることにし、反対側の水晶岩を見に行く。ごつごつした岩があるだけで水晶は見当たらない。近くには鮮やかな赤紫色のミツバツツジが咲き始めていた。
急な斜面が続く山腹を進むと、右側の崖下に白い帯状のようなものが見えてきた。目を凝らすと山桜が列になって咲いている。足元には白花エンレイソウのかれんな姿も。
やがて林道と合流。ここからは長い舗装路歩きだ。うんざりした頃、鶴ケ峰山頂の入り口に。すぐ先に「日本中心の標」の石碑が。「東経137度59分、北緯36度00分47秒」と刻まれている。
ここが日本列島の中心地かと思うと、以前日本最高所の富士山頂に立った時と同じような感慨に包まれた。
その西側には、高さ20メートルほどもある鉄製の展望塔が。転落防止のためパイプに囲まれたらせん階段を上り詰めると、360度の視界が広がる。
あいにくこの日は春がすみが濃く、眺望はいまひとつ。鉄柵には南・北・中央アルプス・八ケ岳などの素晴らしい景色の写真が掲げられていた。
帰路は新緑を楽しみながら大城山まで林道を歩き、再び登山道を下山。横川谷で国天然記念物の「蛇石(じゃいし)」を見て、かやぶきの館の薬湯に入り長野に戻った。
横内房寿
2022年5月21日号掲載