大展望の雪山を楽しむ
快晴・無風。絶好の登山日和に恵まれた2月末日、諏訪郡富士見町と伊那市境の入笠山(にゅうかさやま=955メートル)に登った。山頂からの360度の眺めは素晴らしく、大勢の登山客が雪山を楽しんでいた。
入笠山にはスズランの花が咲く頃何度も訪れていたが、ちょうど梅雨時とあって毎回雨や霧で山頂は視界ゼロ。いつかは売りものの全方位の眺めを見たいと願ってきたのが実現した。
7時に山仲間3人で長野市内を出発。通勤時間帯と重なるため須坂長野東インターから上信越道に入る。北信は雲が多かったが、長野道明科トンネルを抜けると雲一つない青空に。白銀に輝く常念山脈がまぶしいほどだ。松本平からも遠く富士山が望めた。
中央道を諏訪南インターで降り、国道20号を山梨方面へ向かう。少し行った所で右折し、富士見パノラマリゾートへ。首都圏から近いスキー場のため、平日でも駐車場はぎっしり。ここで東京から来た山仲間の友人と合流し、4人でゴンドラリフトに乗り込む。
山頂駅で下へ滑り降りるスキーヤーやボーダーたちと別れ、登山者は雪に覆われた入笠湿原を横切り、入笠山へ向かう。
湿原を抜けた先の山荘前でスノーシューを履く。麓の道は圧雪状態のためアイゼンの方が歩きやすいが、上部は雪が深くなるためスノーシューで行くことにする。
「花畑」と呼ぶスキーゲレンデの跡地の中を登り始める。すると、猛スピードで滑ってきたかと思うと、ゴロゴロと転がる。若い男女が雪まみれで、そり遊びに興じていた。
ゲレンデ跡を上り詰めると樹林の中へ。しばらく進むと、右手上部に山頂部の尾根が見えてきた。そこへは登山道から外れて直線の踏み跡が通じている。
不慣れなスノーシューで仲間と少し離れて登ってきたため、ここなら短絡ルートになると思い登り始めた。ところが、スノーシューの踏み跡が少なく四苦八苦。急斜面のため後ろへひっくり返らないようにこらえ、何とか登りきった。30分ほどかかったろうか。「急がば回れ」を痛感する。
到達した山頂は樹木が一本もない一面の雪山だ。中央に山名標柱と全方位の展望盤があり、30人ほどの登山客が休んでいる。見渡せば、間近に八ケ岳の大パノラマが広がる。富士山をはじめ、南ア、中ア、北アの三つのアルプスが一望できる。まさに360度の眺めだ。
圧巻の北アルプスは、白馬岳から乗鞍岳まで真っ白な山々が連なっている。右下には諏訪湖が小さく見える。これほどの大展望は空気が澄んだ冬山ならではだ。
風もなく暖かい山頂で昼食を取り、帰りは登山道で下山。ゴンドラを降りた後、麓の温泉に立ち寄り、17時前には帰宅した。
横内房寿
2023年3月11日号掲載