絶景は見えず花を楽しむ
関東甲信の梅雨が明けた7月下旬の土曜日、「北アルプスの鏡」と称される白馬村八方尾根の八方池を訪れた。期待していた水面に白馬三山の姿を映す絶景は、あいにく厚い雲に覆われ見えなかった。代わりに、今を盛りと咲き誇る高山植物の花々を楽しんだ。
10日ほど前から天気予報を見定め、この日を選んだのだが、平地は晴れていても山の天気は異なることを改めて実感した。
山仲間3人で7時に長野市内を出発。五輪道路で白馬村へ向かう。中条のトンネルを抜けると、いつもなら見えるはずの鹿島槍ケ岳の姿が見えない。小川村から白馬村に入っても、北アルプスの上部は雲がかかったままだ。
太陽が照りつけるにつれて雲が上がることを期待する。
ゴンドラ乗り場の手前1キロほどの無料駐車場に車を置き、八方駅まで歩く。9時ごろゴンドラリフトに乗り込み、兎平へ。ここには最近、駅舎の脇に展望テラスが設けられた。
天候の回復を待つため、テラスの近くから次々に舞い上がるパラグライダーを見物する。走りながら離陸し、ゆったりと空中散歩する姿は実に気持ちよさそうだ。
続いて乗った4人乗りリフトの下は、色とりどりの花が広がるお花畑だ。濃いピンクのシモツケソウや白いオオバギボウシ、ヤマブキショウマなどが目を引く。
時折、紫のクガイソウや朱のクルマユリも。リフトは高さ1.5メートルのため、草丈の長い花はぶら下げた足の靴底に着くほどだ。
ニッコウキスゲの咲く鎌池湿原を経て、もう一本のリフトを乗り継ぐと登山口の八方池山荘だ。相変わらず山々は雲に覆われ、霧が濃い。
山荘の脇から急な上りに入る。岩がゴロゴロしていて歩きにくい。しかも表面がつるつるした蛇紋岩のため滑りやすい。途中から整備された木道コースに入る。見上げると、週末とあって軽装の観光客も含め登山者の長い列が続いている。
第2ケルンの手前で休憩し、池を見下ろす第3ケルンへ向かう。晴れていれば眼前にそびえる白馬三山や不帰ノ嶮(かえらずけん)が池の向こうに見えるはずだが、真っ白で何も見えない。
池のほとりまで降り、昼食を食べながらガスが上がるのを待つ。池の周囲は同じように回復を待つ登山者でにぎわっている。
1時間ほど待機したが、回復の兆しはない。眺めが良ければもっと上の丸山ケルンまで行くつもりだったが、花を眺めながらゆっくり下ることにする。
黒菱平まで降りると、雲の間から白馬三山の一部が見えるようになった。ここで下りのリフトを間違えるハプニングが。再び上り返し、乗り継ぎ用のリフトとゴンドラで下山した。
2023年8月5日号掲載