子どもの頃、夏休みの終わり間際にたまった宿題を大急ぎでやったという人は多いのではないでしょうか。
振り返ってみると、切羽詰まっていたけれども集中でき、勉強がはかどったという思いはありませんか。実はこのように時間がない時ほど、特別に集中力が高まるのです。この効果は「集中ボーナス」と呼ばれています。
仕事でも、締め切りまでまだ時間的に余裕があると、メールやウェブニュースのチェックなど横道にそれ、仕事がはかどりません。一方、締め切りが近いと期限内に仕事を終わらせないといけないので仕事に集中できるのです。
これは時間だけでなく、ものやお金などが足りない時、少ない時にも起こります。例えば、仕送りとバイト代でぎりぎりの暮らしをする学生は、1円でも安くておいしい食事を探します。また、バッティングセンターで、繰り返しバッティング練習をするより、ストライク三つでアウトになる試合の方が一打に集中します。
このように集中ボーナスは良い結果をもたらす反面、マイナス面もあります。集中し過ぎるあまり、目の前のほかのことが見えなくなってしまうのです。この状態は「トンネリング」と呼ばれています。トンネル内にいるかのように目の前に意識を集中するあまり、周囲に意識が向かない状態です。
借金の返済で、月々の金策にきゅうきゅうとしていると、最終的な返済のゴールが見えなくなってしまうのもトンネリングの影響です。
最近はリモートワークが普及し、在宅で働く人が増えました。平日の昼間、在宅勤務中のお父さんやお母さん、奥さんや旦那さんに、手伝いを頼みたくて声をかけてもろくに返事もなくて文句を言いたくなったということはありませんか。そんな時、もしかしたら、時間がなくなり、集中ボーナスを活用し、トンネリング状態にあるのかもしれません。
集中ボーナスによるメリットとトンネリングというリスクは表裏一体です。集中ボーナスを意識的に使い過ぎるのは避けたほうがいいでしょう。夏休みの宿題と同様、物事は余裕を持って、計画を立てて無理なく進めることが一番です。
(マーケティングコンサルタント)
(2020年9月19日掲載)