はしごを上り岩峰の頂へ
うだるような暑さが続いた盆過ぎの土曜日、岩登り経験が多い友人と長和町の仏岩(1336メートル)に登った。見上げるような岩峰の頂に、県宝の宝篋印塔(ほうきょういんとう)が安置されている。5カ所のはしごを上り詰め、奇観に接した。
上田から白樺湖方面へ向かう時、大門峠手前の国道152号沿いに仏岩の案内標識と立派な説明板が立っている。以前から、ここを通るたびに気になっていた。
7時半に長野市内を出発。長野インターから上信越道を走り、坂城インターで降車。塩田平から丸子に入り、長和町で和田峠へ向かう国道142号と分かれ仏岩の登山口へ。
現地の説明板によると、山頂の塔には鎌倉時代末の応長元(1311)年の銘が刻まれており、県内では在銘の石造宝篋印塔では最古—とある。
さらに、江戸時代後期の文政10(1827)年に、岩茸(いわたけ)採りに入った地元の人によって発見されたという。
鎌倉時代に誰が、どんな目的で、どのようにして岩の上に設置したのか。それが年月を経て、江戸後期になって見つかったというのも興味をそそられる。
10時前に登り始める。間もなく沢に架けられた木橋を渡り、うっそうとした林の中へ。サワグルミの木が多いのか、登山道では落ちているクルミの実を幾つも見かける。
やがて樹間越しにあずまやが見えてきた。立派に見えるが、老朽化して危険なため立ち入り禁止となっている。
この付近から、見上げるような大岩が現れる。二つ重なっている「だるま岩」の脇で休憩。その先は急な斜面を横切る。道幅が狭く、気を抜けない。アルミ製の9段のはしごを上り、さらに6段のはしごが続く。ここはまだ危険を感じない。
しばらく平たんな道を進むと、樹齢300年というアカマツの大木が。この先から両側の岩が狭まり、鎖場となる。登り切ると、8段の最初の鉄製はしごが。
これを上ると、岩上のテラスに。目の前に9段と11段の鉄製はしごが連続し、頂に鉄柵で囲われた宝篋印塔が見える。最後のはしごは高さ10メートルはあり、しかも急なため緊張する。
頂に出ると、360度の眺めだ。東南の蓼科山は雲の中だったが、南西の霧ケ峰はよく見えた。車山の山頂には気象観測のドームも。
眼前には、誰も登ってないと思われる険しい岩峰が二つ。岩の上は狭いため、身に着けた簡易ハーネスの先のロープを鉄柵に結び付けて行動する。
以前上った人によると、宝篋印塔の下にはシマヘビがいて、時々出てくるとか。パニックになるのを心配したが、この日はお出ましにならず一安心。
帰路は慎重に同じルートを下る。昼前に下山したため、近くの黒曜石原産地にある「星くずの里たかやま 黒耀石体験ミュージアム」を見学。国道142号に出て、知る人ぞ知る卵かけご飯の食堂で遅い昼食を取り、道の駅の温泉に入って帰宅した。
横内房寿
◇訂正 9月2日号の「白山」の記事で、鳥海山は、「秋田・山形県境」にある山でした。
2023年9月16日号掲載