鎖場登り金太郎の大穴へ
8月下旬の土曜日に、大町市八坂の大姥(おおば)山(1003メートル)に登った。急斜面に鎖場が連続し、金太郎伝説のある大穴にはたまげた。標高は低いが、スリリングで登りがいのある山だった。
大姥山は10年以上前に、一度登ったことがある。当時に比べ登山口までの道は荒れていた。だが登り始めると鎖はしっかり固定されており、所々に立つ金太郎姿の案内板が優しく導いてくれた。
7時過ぎに山仲間3人で長野市内を出発。国道19号を松本方面へ。信州新町を過ぎ、八坂へ入ると間もなく右折して県道へ入らねばならないが、この入り口が分かりにくい。
注意していたのに行き過ぎてしまい、Uターン。さざなみ荘を過ぎると、左折する県道入り口に金太郎の絵が描かれた案内板が見えてきた。松本方面から来れば分かりやすい。
県道をしばらく進むと、登山口へ通じる林道入り口に金太郎の案内板が現れた。だが随分汚れている上、川沿いの林道は草に覆われて狭い。ここも通り過ぎては、結局あそこしかないとまた戻る。
意を決し、「ポツンと一軒家」へ向かうような細道を細心の注意を払いながら上る。下りの車があれば、擦れ違いは不可能だ。
20分ほど走ると、車が4、5台止められる小広場に。トイレの小屋まである。やはり、ここが登山口なのだ。
何度も右往左往したため、9時半ごろ歩き始める。間もなく立派な鳥居の先に大姥神社の本宮が。安全を祈願し、社殿の中をのぞくと大きなちょうちんが幾つもつり下げられていた。
神社の左手から本格的な上りに入る。急坂を登りきると、最初の鎖場だ。ここから山頂までは鎖場が9カ所ある。1カ所に2、3本の鎖があるから、全部で20本以上手にする。
中ほどにあるベンチで休憩し、汗を拭う。その先はしばらく雑木林の中のやせ尾根となり、快適な道が続く。少し上ると、また金太郎の案内板が現れ、大穴への分岐に。
左折して、急な斜面をこわごわ横切る。ほどなく巨大な露岩が大きくえぐられた大穴に。幅40メートル、高さ10メートル、奥行き7メートルほど。その規模に驚く。内側にはハチの巣状の穴がたくさん開いている。
奥の壁際には大姥神社の奥宮が。ここで金太郎が大姥に育てられたという。
見物した後、再び分岐に戻り、最後の鎖場に取り付く。急勾配の崖に連続して架けられた鎖をたどり、登りきると山頂部だ。日陰を与えてくれるあずまやと、テレビの電波塔が立っている。
西南に北アルプスの常念山脈が。東には聖山と大岡の棚田。北東には信州新町の町並みと犀川の琅鶴(ろうかく)湖も見える。あずまやでゆっくり昼食を取り、来た道を慎重に下る。帰りにさざなみ荘で入浴し、生坂方面を回ってから帰宅した。
横内房寿
2023年9月30日号掲載