北の大地に火山群を見る
各地で紅葉だよりが聞かれるようになった10月中旬、旅行社の北海道ツアー(3泊4日)に参加した。肝心の紅葉は色づき始めだったが、北の大地で数多い火山に接することができた。
中でも目を引いたのは、蝦夷富士と呼ばれどっしりとした姿の羊蹄山(1898メートル)や、活火山の有珠山(737メートル)と昭和新山(398メートル)だった。
初日は長野駅東口を6時20分にバスで出発。羽田空港から新千歳空港へ。さらにバスで札幌市内に。
2日目は小樽で観光した後、ニセコへ。車窓から見る羊蹄山は山頂部に雲がかかっていたものの富士山そっくり。端正なコニーデ型火山で、深田久弥による「日本百名山」の一つ。登るには4〜6時間もかかるという。
国際的スキーリゾートとなったニセコは、北側に最高峰のニセコアンヌプリ(1309メートル)などの火山が連なる。バスはニセコ連山の間を抜け、高層湿原の神仙沼へ。
駐車場から沼までは木道が整備されており、歩いて20分ほど。ヒグマの心配もあり、日暮れ前に戻りたいのか、先頭のバスガイドさんは先を急ぐ。周囲の紅葉が始まった沼を見たのは10分足らずだ。
3日目はニセコから洞爺湖周辺へ。車窓から望む羊蹄山はやっと雲が取れ、全貌を現した。最初に訪れた京極ふきだし公園は、羊蹄山の裾野にある「名水の郷」。山に降り注いだ雨や雪がろ過され、一日に8万トンも湧き出しているという。
続いて、日本で3番目に大きいカルデラ湖の洞爺湖へ。西岸のサイロ展望台からの景色は素晴らしい。周囲を山に囲まれた湖面には噴火してできた四つの島々が浮かぶ。
湖の南には「世界ジオパーク」に認定されている有珠山と昭和新山がそびえる。20世紀に4回噴火した常時観測火山の有珠山は、山体崩壊もあって山頂部は溶岩の荒々しい姿を見せる。
すぐ近くの昭和新山は戦時下の1944年に突然噴火し、麦畑の中に溶岩ドームが隆起したというから驚きだ。
有珠山ロープウエーに乗って山腹まで行ってみた。車窓から見下ろす昭和新山は、上部が焼けただれたように赤っぽい。北側からは噴煙が上がっていた。
山頂駅近くの洞爺湖展望台からは、広い湖面の右側にぽつんとニキビのような昭和新山が。
山頂駅から西側にある火口原展望台からは、77年の噴火で誕生した大きな火口跡と、太平洋の噴火湾(内浦湾)が望めた。
4日目は支笏湖へ。ここも大きなカルデラ湖だ。周囲には72年札幌冬季五輪で滑降コースが設けられた恵庭岳(えにわだけ=1320メートル)や、皿にプリンを載せたような形の樽前山(たるまえさん=1041メートル)など活火山が並ぶ。
最大水深363メートルの湖と、これらの山々を見た後、新千歳空港へ。羽田からバスで長野駅に戻ったのは、夜の10時過ぎだった。
横内房寿
2023年11月4日号掲載