雨の中 鎖場を登り山頂へ
シャクナゲの開花期を迎えた6月初めの日曜日、スタッフを務める長野県カルチャーセンター「里山講座」の下見で、佐久の名峰・御座山(おぐらさん)(2112メートル)に登った。南相木村と北相木村の境にそびえる東信地方の高峰だ。39年前の日航機墜落事故で、最初に現場とみられた山でもある。
6時半に上信越道松代パーキングエリアで仲間3人が合流。登山口と下山口が異なるため、2台の車で出発する。佐久小諸ジャンクションから中部横断道に入り、八千穂高原インターで降りる。国道141号を南下、小海町からまず北相木村へ入り、下山予定地の白岩登山口へ向かう。
だが、高原野菜畑の農道を上り詰めた所にある登山口には「関係車両以外立ち入り禁止」の看板。登山者は数キロ先の長者の森コースから登るよう勧める表示が出ている。
仕方なく群馬県境のぶどう峠に近い長者の森へ。ここに1台車を置き、もう1台に3人が乗って県道を下り、南北相木の分岐から南相木村へ入る。9時半ごろ、やっと最奥部にある栗生(くりゅう)登山口から登り始めた。
沢沿いのカラマツ林の中の急斜面を、ジグザグに登って行く。足元にはクワガタソウの小さな花が。
1時間ほど歩くと、中間点に近い不動の滝に。水量は多くないが、高さ10メートルほどの岩壁から落下。滝の下に以前はあった不動明王が彫り込まれた石像が見当たらない。
後日、村役場に問い合わせると、2019年の台風災害時に流されてしまったという。
滝で休んでいると、心配していた雨が降ってきた。いきなり本降りとなり、慌てて雨具を着る。登山道はさらに険しさを増す。やがて岩場に差しかかり、長い鎖場を登る。雨で滑りやすく、慎重に登るため時間がかかる。
ようやく登り終え、少し進むと石祠がある小ピークに。いったん下り、再び上り返すと立派な避難小屋が見えてきた。
13時半ころ到着。小屋の中にリュックを置き、岩の上をはって山頂部へ。幸い雨はやんだ。目がくらむような崖の上に、石祠と木製の山頂標識が立つ。以前あった鉄剣は、なぜかなくなっていた。
晴れていれば、目の前に八ケ岳を一望でき、周囲の山もよく見えるはずだ。あいにくガスが湧いていて眺望は利かない。
避難小屋に戻って昼食を取り、下山しようとしたところ、付近にアズマシャクナゲが数輪固まって咲いていた。赤いつぼみから濃いピンクの花となり、次第に色あせて散っていくのが分かる。
帰路は再び雨の中を北相木村の長者の森へ向かう。頭上を覆うシャクナゲのトンネルをくぐったが、すべての木に花が咲くわけではない。花は時折、見られるだけ。今年は外れ年のようだ。
登山道は途中で白岩コースと分かれ、北東へ向かう。長い下りだ。雨にぬれたシダ類の緑が美しい。17時半過ぎにようやく下山した。
遅くなりついでにぶどう峠を越え、日航機墜落事故があった御巣鷹山の展望台まで行こうとした。だが、群馬県側は舗装工事で通行止め。やむなく引き返し、南相木村の栗生登山口へ回る。置いてあったもう1台の車に乗って村の温泉、滝見の湯で汗を流す。
そんなこんなで自宅に戻った時は22時半だった。女房殿がおかんむりだったのは言うまでもない。
横内房寿
2024年6月15日号掲載