「川」をテーマに巨大な絵 川上村の小4生らと描く
2002年の秋、私は、長野朝日放送(ABN)の「みつめて!信州生テレビ」に出演しました。年1回の放送で毎回テーマが決まっている7、8時間の生放送の特別番組です。その年のテーマは「川」で、県内各地から中継がありました。
私が出演したのは、千曲川の源流、川上村の村立第二小学校で4年生の子どもたちとストーンペインティングをして、さらに5メートル四方の絵を描きあげるという企画でした。
5メートル四方の絵の内容は、子どもたちとの事前打ち合わせで川の主であるイワナに決めていました。キャンバスの下部が水中で、そこに大きなイワナを一匹描き、水面から上には山を描くという構図です。絵を描く時間は3時間しかありません。すべてを子どもたちに任せるのは難しかったため、山や水面や、イワナの輪郭などを私があらかじめ描きました。
子どもたちは高さ2メートルほどの足場に乗ってどんどん絵を描いていきました。決められた時間内で描けるか不安でしたが、そんな不安を払拭するかのようにガキ大将のような存在の子どもが一人でどんどん描いていきました。私は頼もしく思う一方で、出る幕がなさそうなおとなしい子どもに、「今だ。目を描いて」などとアドバイスしました。
無事に絵が完成して安心しました。番組の最後に、熱気球に絵をぶら下げて地上20メートルまで上がりました。急きょ私も乗せてもらえることになり、上空から見た川上村のきれいな景色を楽しみました。この時の絵は、今でも小学校に保管されているそうです。
私の作品はキャンバスの中で完結する比較的小さなものが多い中、この企画で子どもたちと巨大な絵を描き、「今後、大きな絵を描く仕事を依頼されても、どうにか対応できそうだ」という自信になりました。
同じ頃、千葉県浦安市で、福祉バス3台をラッピングバスにする絵を描く仕事を請けました。絵の下側が海、上側が空という構図で、海に浮かんでいるカルガモの上にコブシの白い花が舞い、コブシの花がやがてカモメになるという絵です。浦安市は海に面した街なので、海にちなんで魚やクラゲも描きました。
この福祉バスは、障害者グループの旅行などに使われました。聞いた話だと、成田山に行った時そのバスを見たはとバスのガイドの人が、その福祉バスに乗ってガイドしたいと言っていたとか。私の作品の評判が良かったことにうれしい気持ちになりました。この仕事の後、浦安市から4台目のラッピングバスの仕事を請けました。
聞き書き・広石健悟
2024年10月26日号掲載