雑木林を歩き秋を感じる
紅葉が始まった10月中旬の土曜日、山仲間たちと軽井沢町の碓氷峠から留夫山(とめぶやま=1591メートル)に登った。雑木林の中を歩く静かなコースで、秋の深まりを感じた。
当初は白糸の滝近くの長日向(ながひなた)から鼻曲山(はなまがりやま=1655メートル)に登り、留夫山を経て碓氷峠に下る予定だった。だが、鼻曲山へは登山道を通行止めにして大規模な伐採工事が行われていたため、碓氷峠から留夫山までを往復することにした。
7時に長野市内を出発。上信越道を小諸インターで降り、浅間サンラインから軽井沢町へ。町内に入ると国道は渋滞し、観光客の多い旧軽井沢の商店街を通過。狭く曲がりくねった旧中山道を上り、碓氷峠に。
県境を挟んで長野、群馬両県側に二つ並んで社殿の立つ熊野皇大神社の先、群馬県側が登山口だ。付近には石の祠が立ち並ぶ。
9時半に登り始め、雑木林の中の緩い上り坂を進む。ミズナラやカエデ、ブナが色づき始め、足元にはドングリや山ブドウの実が落ちていた。
最初のピークの一ノ字山が近くなると、同行した〝三角点マニア〟のKさんが、やぶの中で三等三角点を見つけ出した。付近の倒木には天然ナメコがあり、幹にスギタケがびっしり生えている木も。
一ノ字山からは真っすぐに平たんな台地が続く。遠くからこの山を見ると、真一文字のように見えるという。
平たん地を下り、鞍部から留夫山に向かって急な斜面を上り返す。一帯は浅間山の噴火で降り積もった火山灰により、細かい粒状の土砂が堆積している。
そのため滑りやすい上、登山道は雨水で深く帯状にえぐられている箇所が多い。その都度、道路脇の斜面に上がって登ることになり、時間がかかる。
途中で休憩した時、樹間越しに浅間山が見えた。ふだん見慣れない東側からの山体は大きな三角錐のようだ。
小ピークを二つほど越え、正午前に留夫山の頂上に。ここには立派な一等三角点がある。周囲をぐるりと林に囲まれた山頂で昼食。北側の樹間越しに鼻曲山が見えたが、まだ相当距離がある。
空模様が怪しいため、12時半には下山を開始。同じ道を戻るが、下りの方が足場が悪く、転ばないよう注意する。
一ノ字山への上りに入り、台上を歩いていると山頂標識が見当たらない。いつの間にか通り過ぎてしまった。
さらに下りに入ると、木の幹に熊の生々しい爪痕があるのを発見。まだ真新しい。そういえば、登山口に「熊注意」の看板があったのを思い出した。
下山後は熊野皇大神社に参拝。軽井沢町から佐久市に向かい、佐久平ハイウェイオアシス内の平尾温泉「みはらしの湯」に入り、上信越道で長野へ。ほかの登山者には一人も会わなかった。
(横内房寿)
2024年11月9日号掲載