テレビCMで好感度の高いタレントを起用するのはなぜかというと、商品の好感度を上げるためです。
人は、商品の良しあしを確認する前に、タレントが薦めているからという表面的な理由で商品を高く評価してしまいがちです。このように表面の顕著な特徴に引っ張られて全体の評価をゆがめてしまう心理効果を「ハロー効果」と呼びます。
ハローとは、聖人の頭の周囲に描かれる光輪のことです。心理学者のソロモン・アッシュは、この心理を証明する実験を行いました。
被験者に人間の特性を表す言葉を並べた二つのリストを見せ、「どちらが好きか」質問しました。一つは「知的な、勤勉な、強力な、非難的な、頑固な、嫉妬深い」、もう一つは「嫉妬深い、頑固な、非難的な、強力な、勤勉な、知的な」です。どちらも同じ言葉が入っていますが、前者はポジティブな特性の言葉を前に、ネガティブな言葉は後に並べ、後者は逆にしてあります。実験の結果、前者のリストに好感をもつ被験者の方が多くなりました。ポジティブな特性の言葉を先に目にすると、好感度が高まったのです。
この心理は昔の原始的な時代からの遺伝だと言われます。生存が厳しかった時代、難しく考えるより速断できる方が生存に有利であり、その傾向が遺伝的に受け継がれたのです。
現代では、例えば企業の採用面接で、出身大学名や容姿によって有利になったり、人事評価で、目立つ成果をうまくアピールできた人が高く評価されたりするのもハロー効果の現れです。一方、ハロー効果で評価を誤ると、企業にとって損失になるかもしれません。
ハロー効果を人間関係に利用するとどうでしょう。例えば好きな相手を振り向かせたい時や、結婚前に相手のご両親にあいさつする時などは良く評価されたいもの。そこで、とにかく一つでも良い点を目立たせるのです。はきはきと明るく、あいさつするだけでも効果はあります。
ただし自分が持っている特性の中から目立たせる点を決めるべきです。表面だけを取りつくろうと、後からぼろが出て悲しい思いをすることにもなりかねません。
(マーケティングコンサルタント)
(2020年11月28日号掲載)