数量限定、期間限定、地域限定といった「限定もの」を見ると買いたくなりませんか。
それは、他人の持っていない希少なものに価値を感じるためです。この心理を「スノッブ効果」と呼びます。「スノッブ」は「俗物的」「上流気取り」といった意味です。
物を買うときに限らず、人には他人と違うユニークな存在でありたいという欲求があります。SMAPのヒット曲「世界に一つだけの花」の「ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」という歌詞に共感する人が多いのは、そもそも自分がユニークな存在だという気付きや、そう思うことで安心感を得られるからだと考えられます。
一方で、この連載で取り上げた中には、「スノッブ効果」とは逆の心理もありました。「同調効果」は、周りの多数の人たちと同じ行動を取ることで安心感を得る心理でした。また、多くの人が選んだ選択が、さらに多くの人から選ばれやすくなる「バンドワゴン効果」もありました。
人間には、他人と同じ行動を取りたいという欲求がある一方で、「スノッブ効果」のように、他人とは異なる自分でいたいという欲求もあるのです。人は、一見すると相反するこうした欲求を抱えながら、二つの欲求がうまくバランスを取れる状態を目指すことがあります。
例えば、スポーツのチームに所属するケースを考えてみましょう。あなたはチームの勝利を目指し、チームワークを重んじて、チームメートに同調します。同時に他のチームと異なるチームに所属することに満足しています。個人として独自の存在感を放つわけでなくても、他集団と異なる特定の集団に所属することで、結果的に他と異なる存在である自分を認識できるわけです。
このような状態になることで心理的に安定するのであれば、何らかのコミュニティーに属することは、実はとても大事なことかもしれません。特に長く会社などに所属してきたビジネスパーソンは、定年後、まったくどこの集団にも所属しないよりは、趣味や地域のコミュニティーへの所属を考えるのが良いでしょう。
マーケティングコンサルタント
2021年7月10日号掲載