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51 イケア効果 自分で作った物は高く評価

スウェーデンの世界的な家具大手「イケア(IKEA)」は、日本国内にも10以上の店舗を展開しています。

 近くに店舗のない長野の読者にはなじみが薄いかもしれませんが、比較的安価でデザインが現代的な上、購入者が持ち帰って組み立てるオリジナル家具を多数取りそろえているのが人気の理由の一つです。

 行動経済学には「イケア」の名を取った「イケア効果」という法則があります。これは部分的であっても自分で作った物は、実際の価格以上に高く評価するという心理的なバイアスです。

 「イケア効果」を提唱した米国デューク大学のダン・アリエリー教授は、この心理を検証する実験を行いました。まず参加者を、イケアの箱を組み立てたグループと、組み立てないグループの二つに分けます。次に、これと同じ箱を両グループの参加者に示し「それを手に入れるために払ってもよいと思う金額」を聞きました。すると、自分で組み立てた人が答えた金額は平均78セント、組み立てなかった人は平均48セントでした。自分で組み立てた人は、箱に対して高い価値を感じたのです。

 「イケア効果」と似た法則に、連載第3回で紹介した「保有効果」があります。これは人が一度、手元に置いた所有物に価値を覚え、手放したくないと感じてしまうバイアスでした。人は、製作や所有などのかたちで関わった物事に対して、実際よりも高い価値を感じやすい傾向があるようです。

 イケア効果は、生活や仕事における多くの場面で影響を与えます。例えば、自分の畑で栽培した野菜や果物は、スーパーに並んでいるものよりおいしいと感じます。自分で種苗を植えて水をやり、日光に当てて、大事に育てたのでイケア効果が働くためです。

 さて、この解説を書いている私自身も「イケア効果」に陥らないように注意しなければなりません。なぜなら、この文章は、私自身が「作成に関わっている物事」だからです。読者の皆さんが評価している以上に、文章と内容の出来栄えを高く評価してしまう可能性があるのです。気を付けなくては。

 マーケティングコンサルタント


2021年7月31日号掲載

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