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お茶屋をハシゴ

「お茶の時間」を楽しむには

火を入れたことでお茶の香りが立つことを実演する寿ゞき園茶店の鈴木社長

 11月25日の「まちあるき」は200回目。この記念すべき回の案内人は、この催しがスタートした8年前から昨年まで事務局を担当し、「まちあるき」を100回経験してきた大日方薫さん(40)=長野市。ライターで、2児の母でもある。「門前まち歩きの達人」と言ってもいいような大日方さんが選んだテーマは「お茶屋をハシゴ」。昨年から自宅で仕事をするようになり、「私的茶ブーム」が到来しているという大日方さんが、身近にありながらこれまで通り過ぎていた日本茶の専門店を巡って、お茶の時間をより楽しむための話を聞こうと企画した。

 参加者は10人。13時半、集合場所の楽茶れんが館を出発して、中央通りを下り、まず訪れたのは、大門南の信号機を西に入った「蔦屋総本店」。大日方さんによると、「緑茶色の壁と抹茶色のレンガの外観をずっとめでながら通っていた」という。店の中では、2代目店主二本松弘さん(70)が、かつてこの(界)(かい)(隈)(わい)に16軒のお茶屋さんがあったことや、香りと風味、甘みとコクが特徴の茶葉をセレクトして販売していることなどを話してくれた。入り口には長野では珍しいお茶の木の鉢植えが二つ。ちょうど花の時期らしく、かわいらしい白い花を咲かせていた。

蔦屋総本店の玄関横で白い花を咲かせたお茶の木

 次は、中央通り沿い、セントラルスクゥエア公園前の「長喜園」へ。店は1904年創業。3代目店主宵野間信行さん(69)が、深蒸し煎茶のおいしい入れ方を実演してふるまってくれた。ここでは、産地の茶問屋から茶葉を仕入れ、店舗奥の工場で火入れ、乾燥させて何種類かの茶葉をブレンド。「うまみと渋みの調和よく、飽きのこない」お茶作りをして袋詰めして販売している。普段一般の人は立ち入れない火入れ機を置いた工場も案内してもらった。

 昭和通りと交わる新田町のスクランブル交差点すぐ近くの「山喜園本舗戸谷茶店」は、創業1923(大正12)年、今年100年のお茶店。店を切り盛りする戸谷さん夫妻が、昭和に入って店周辺の街並みを写した古い写真を見せながら、店の歴史を紹介してくれた。

日本茶のおいしい入れ方を実演する長喜園店主宵野間さん

 この後は、南県町のカフェ併設の「中山茶園」へ。父の跡を継いで3年目という店主小林貴美子さん(49)が迎えてくれた。小林さんは、日本茶と店の歴史にふれつつ、ここで販売するお茶の特徴などを紹介。「お茶の味は、産地やメーカーで異なる。気に入った味を探し、普段使いしやすい価格帯のものを選んで。気に入ったお茶をずっとヘビーローテーションできる感じがおすすめ」とアドバイスしてくれた。

 最後は南千歳の「寿ゞき園茶店」へ。4代目の店主鈴木一平さん(36)が案内してくれた。ここは1916年の創業。日常的に漬物を食べる習慣がある地元の客に向けて、あっさりとしたうまみが強いお茶をこしらえているという。急須でおいしく入れたお茶を飲む楽しみを伝えてくれた。

 記事・中村英美


2023年12月9日号掲載

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