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カブトムシの冬支度

秋に急成長する幼虫 北と南で異なる適応

 信州ではあっという間に終わってしまう過ごしやすい季節、足元では虫たちも冬に向けて大急ぎで準備をしています。

 たとえば「カブトムシ」の場合、夏の終わりに卵を産み、今は幼虫が大きくなる時期です。卵からかえった時は1センチにも満たないほどの小ささですが、秋の間に猛スピードで成長します。

 なぜ急いで大きくなるのか、それは厳しい寒さに耐えられる体になるためです。カブトムシの幼虫は、最高気温が15度に満たない環境ではほとんど活動ができないため、寒くなるまでに成長しておく必要があるのです。

 南北に長い日本は北と南で大きな気温差がありますが、ある研究によると「寒い地域に住むカブトムシ」と「暖かい地域に住むカブトムシ」では、幼虫の成長速度が異なるそうです。東北と沖縄で孵化(ふか)してから最大体重に達する期間を比べたところ、東北ではメスが40日、オスは60日くらい、一方、沖縄では120日かかるそうです。厳しい冬を越すため、虫たちも適応しているのです。

 冬の到来というと、「初冠雪」を合図にしている人もいるのではないでしょうか。

 今年の初冠雪は10月4日に北海道の旭岳で、さらに5日には富士山でも観測されました。初冠雪の便りが10月にずれ込んだのは、2004年以来19年ぶりのことです。

 気象庁が初冠雪を調べている山は全国に44あり、長野の「東方連山」もその一つです。麓から見て山頂が白くなっているかどうかが基準で、雲で頂が隠れた場合は、実際には雪が降っていたとしても初冠雪にはなりません。

 ちなみに富士山の観測はどこで行われていると思いますか。正解は山梨県の甲府地方気象台です。つまり、静岡県側から雪化粧が見えたとしても、山梨県側から雪が見えない限り、初冠雪にはならないのです。

 異様に長い夏となった今年、冬が里へと降りてくる前のつかの間の秋を楽しみたいですね。

 気象予報士・防災士


2023年10月28日号掲載

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