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トビイロウンカ

下層ジェット気流に 乗って梅雨期に飛来

人気のある虫とない虫がありますが、特に多くの農家にとって「嫌いな虫」と言えるのが「トビイロウンカ」ではないでしょうか。

 夏の終わりから秋にかけて、水田に茶色の円ができることがあります。体長4〜5ミリの小さなトビイロウンカが、稲の汁液を吸って枯らしてしまうのです。

 この虫は、毎年梅雨の時期の6〜7月に、中国南部や東南アジアから1、2日かけて海を渡って日本にやってきます。飛来数は九州などの西日本ほど多い傾向にあり、年によっては東北の辺りで確認されることもあります。では一体どうやって海を越えているのでしょうか。

 実は「下層ジェット気流」を利用しています。一般的に「ジェット気流」というと、上空10キロメートルあたりを吹く偏西風の中でも、特に強い部分を指します。

 トビイロウンカを運ぶ「下層ジェット気流」は、それよりも低い1500メートル付近の強風帯で、梅雨前線の南側に出現します。

 この強風帯は、小さな虫を日本に連れてくるだけでなく、西日本を中心に大雨をもたらすこともあります。

 下層ジェット気流が梅雨前線を目がけて吹くと、南西方向から暖かく湿った空気が流れ込むため、前線の活動が活発になり、大雨の可能性が高まります。

 さらに、最近は「地球温暖化」により、災害級の大雨が増えてきています。気温が高いほど、空気が含むことのできる水蒸気の量が増えるためです。

 大雨への備えとして、強く勧めたいのが「キキクル」(危険度分布)です。気象庁のホームページで確認でき、大雨の際、自分がいる場所にどのくらい危険が迫っているかが分かります。

 作物の天敵である虫も、大雨災害も、気流とともに現れる前に情報を集めて備えておくことが大切になります。

 気象予報士・防災士


2024年6月29日号掲載

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