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ナミビアの砂漠

=2時間17分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で公開中

(C)2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

今を生きる主人公の 心の危うさを捉える

 長野市出身の山中瑶子監督は、19歳の若さで自主制作した映画「あみこ」(2017年)が、ぴあフイルムフェスティバルアワードで観客賞を受賞し、ベルリン国際映画祭に史上最年少で招待されるなど国内外で脚光を浴びた。「ナミビアの砂漠」は、山中監督の本格的な長編第1作にして、今年5月、カンヌ国際映画祭の「監督週間」で、女性監督として史上最年少で国際映画批評家連盟賞を受賞した話題作だ。

 「世の中も、自分の人生もつまらない」。美容脱毛サロンで働く21歳のカナ(河合優実)は、やりたいこともなく毎日を生きている。同棲中のホンダ(寛一郎)の優しささえも、うっとうしく退屈し始めていた。刺激を求めて乗り換えたクリエイターのハヤシ(金子大地)と新たに暮らし始めるが、互いのペースのすれ違いから次第に不満を募らせてゆく。

 平然とうそをつき人を傷つける。甘え上手でかわいらしく振る舞ったかと思うと、豹変し暴言を吐き相手を突き放す。感情をむき出しにして、自分自身を制御できず刹那的に生きるカナ。自らを追い込むような衝撃的な言動は、破壊かそれとも解放なのか。

 まさに今という時代を生きる、若い女性の心の危うさを捉えた山中監督の脚本は、現代社会のリアルな空気を映し出す。

 何にも情熱が持てず無気力でもろい。ともするとエキセントリックなヒロインを魅力的に演じた河合優実は、今年公開された「あんのこと」で、すさんだ薬物中毒の少女を演じるなど、演技力の高さで評価される旬の女優の一人だ。まだ高校生の時に、偶然「あみこ」を観て衝撃を受け俳優を志したという、山中監督とは深い因縁の持ち主だ。目まぐるしく変わる表情から目が離せない。

 監督、メインキャストは共に20代。カナ、ハヤシ、ホンダの3人がぶつかり合い、生み出されるエネルギッシュなパワーに圧倒される。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター

 

 山中瑶子監督の舞台あいさつが9月15日(日)12時20分からの回の上映後に行われます。予約受け付けは劇場窓口か☎︎232・3016


2024年9月14日号掲載

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