「日の長さ」に反応し さなぎの姿で冬へ
人と同じように、小さな虫たちもこの時期はあの手この手で冬支度をします。
アゲハチョウやモンシロチョウは「さなぎ」の姿で冬を越します。冬にチョウの姿になると、寒さや飢えで死んでしまうからです。
それにしても、なぜチョウは冬が来ると分かるのでしょう。
春から夏にさなぎになったチョウは、10日ほどで羽化して成虫になりますが、秋にサナギになると、そのまま冬眠に入ります。季節によって、さなぎでいる期間が変わるのです。
実は、チョウには「光周性」という、「日の長さ」に反応する性質があります。昼の長さが短くなったことに気付いて、成虫にならないよう、さなぎのままでいるのです。
ある研究によると、モンシロチョウは、昼間の長さが東京で12時間10分より短くなると、冬眠することが多くなるそうです。今年で言えば、先月22日を境に冬眠していくということです。
秋に急激に日が短くなることは私たち人間も気が付きます。理由は二つあります。
一つめは「日の入りの変化が四季の中で最も大きい」ため。例えば、6月や12月は日の入りの時間が1カ月で10分ほどしか変わらないのに対し、今の時期は1カ月で40分くらい変わります。
二つめは「薄明時間が短い」ためです。薄明時間とは、日が沈んでから完全に暗くなるまでの時間で、この時間は一年を通して同じではありません。
6月は日が沈んだあと2時間くらいかけて暗くなりますが、秋はそれより30分ほど短いため、一気に暗くなったと感じるのです。
秋の薄明時間が短いのは、空気が澄んでいるからです。夏は空気中に水蒸気や土ぼこりが多く、それらが太陽の光を散乱させるため、日が沈んだ後も明るさが残ります。秋は逆に水蒸気も土ぼこりも少ないため、散乱が起きづらいのです。
急激に暗くなると、交通事故も増えるとされています。帰宅の時など気をつけてください。
気象予報士・防災士
2022年10月29日号掲載