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リアル・ペイン〜心の旅

=1時間30分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で2月28日(金)から公開

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いとこ同士の2人旅 本当の痛みとの対峙

 長年疎遠だったいとこ同士の2人が祖母の遺言で再会し、祖母の故郷ポーランド行きのツアー旅行に参加する。

「リアル・ペイン〜心の旅」は、正反対の性格のいとこ同士が旅を通して己の人生を見つめ直し、「リアル・ペイン(本当の痛み)」と対峙する力を見いだしていくロードムービーだ。


 デヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)は亡くなった祖母をしのぶため、いとこのベンジー(キーラン・カルキン)と一緒に祖母の故郷ポーランドへ。2人が参加したのは「第2次世界大戦の史跡ツアー」。ナチスドイツによるユダヤ人のホロコースト(大量虐殺)の歴史をたどる旅だ。


 幼い頃は兄弟同然だったが、疎遠になっていた2人は性格も行動のリズムも合わず、空港からぎくしゃくしてばかり。さまざまな史跡を巡りながら、ムードメーカーのベンジーはほかのツアー客と打ち解けてゆくが、デヴィッドは彼の自由奔放な行動に不安を募らせる。


 ホロコーストをテーマにしたツアー旅行が現代まで行われていることに素直に驚いた。過去に戻り、祖先の苦しみと悲しみに思いをはせていく。強制収容所では誰もが言葉を失い、残酷な傷跡に頭を垂れ、鎮魂の思いに深く沈み込んでゆく。ホロコーストは歴史に埋もれさせてはならないことが、旅を通して切々と伝わってくる。


 そんな中で狂言回しのように振る舞うのがベンジーだ。最初は傍若無人に見えるが繊細さを秘めた行動が、次第にほかのツアー客たちに影響を与えていく。生真面目で神経質なデヴィッドもベンジーに振り回されながらも、自分たちの家族が受けた恐怖と向き合う。2人の心の変化がラストへの大きな鍵となる。


 ユダヤ系アメリカ人のジェシー・アイゼンバーグが、自身のポーランド旅行の経験から脚本を書き、主演、監督、製作も務め、アカデミー賞で脚本賞にノミネート。屈折したキャラクターを演じたキーラン・カルキンが助演男優賞にノミネートされている。


 ポーランド出身の音楽家ショパンの名曲が流れるのもこだわりだ。

シニカルな笑いをちりばめながらも心に突き刺さる悲しみ。観客の私たちも、彼らとともに痛みを知る旅をする。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年2月22日掲載

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