「素数ゼミ」を知っていますか。大学のゼミのようですが、正解は昆虫の「セミ」です。北アメリカに生息する13年ごとと17年ごとに大量発生するセミのことで、13と17が素数であることからその名前がつきました。今年はニューヨークやワシントンなどの米国東海岸で「17年ゼミ」が大発生するといわれています。数十億匹の成虫が一斉に地中から出てくるため「蝉(せみ)時雨」などという情緒ある言葉では表せないほど、うるさいようです。
日本には素数ゼミはいませんが、5月の「ハルゼミ」からスタートして、夏には「アブラゼミ」「ミンミンゼミ」「クマゼミ」「ニイニイゼミ」「ツクツクボウシ」などが鳴くようになります。
最近は特に「クマゼミ」の分布が変化しています。「クマゼミ」は日本にいるセミの中で最も大きなセミです。大阪など西日本の都市では他のセミが減り、クマゼミばかりになってきているようです。以前は西日本にしかいませんでしたが、最近は生息地が北上しています。県環境保全研究所によると、信州でも10年ほど前から飯田下伊那地方で見られるようになり、最近は北信でも目撃されているとのことです。クマゼミの北上には地球温暖化が影響しているといわれています。
昨年までは気象庁でも「クマゼミの初鳴き日」を観測していました。しかし、今年から「生物季節観測」の対象が大幅に減り、サクラやウメなど植物6種目だけになりました。
しかし、生物季節観測の大幅削減を惜しむ声が非常に多かったこともあり、最近になって気象庁から新たな方針が打ち出されました。これまで気象庁だけで観測していたところに、環境省と国立環境研究所が加わり、三つの機関で数年かけて新たな観測網をつくっていくとのこと。専門家が調査を行うだけでなく、市民からも広く情報を募る方針のようです。クマゼミについてもこれまで以上に多くの情報が集まるのではないかと期待しています。
気象予報士
2021年5月29日号掲載