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夢中になれることをぶれずに

フルート奏者 坂口実優さん

須坂市連合婦人会のイベント「月見夜楽」で演奏する坂口さん=10月23日

絶対音感 才能に磨き

幼い頃発達障害の診断受け

 「見上げてごらん夜の星を」—。優しく伸びやかで、豊かな表現力を備えたみずみずしいフルートの音色が会場を包み込む。10月23日、旧上高井郡役所ホール(須坂市)。ミニコンサートを開いた坂口実優さん(25)は、「夢中になれることをぶれずに積み上げた先に、私の演奏を楽しみに来てくれる皆さんが待っていました」と感謝の気持ちを伝えた。


 坂口さんは幼い頃、発達障害の診断を受けた。人と話すのが苦手で、自分から言葉を発するのも嫌、話しかけられるのも怖かった。「ずっと孤独の中で過ごしてきた」。入学した地元の小学校になじめずに3年生で不登校に。4年生からは心機一転、私立の小中一貫校に転校した。


 6年生の時のこと。昼休みにフルートを吹く中学校の先輩の姿を見かけ、「すごくきれいな音。それにピカピカでなんてきれいな楽器なのだろう。いつか私もこんな音を出してみたい」と引き込まれた。生まれて初めて自分からやってみたいと思えたことだった。中学校の入学式の日、父母に頼むと、その日のうちに楽器店でフルートを買ってくれた。


 幼少期に絶対音感があることが分かり、ずっとピアノを続けてきたが、それは「周りのみんなが喜んでくれたから」。そこから本格的にフルートを始め、世界的なフルート奏者清水和高さん(東京都)の下、レッスンを重ねた。最初のレッスンで清水さんに「奏者として欠落しているところがない。金の卵」と褒められた時「フルート奏者として生きていきたい」と人生の道が開けた。高校の3年間は、東京でのレッスンに、両親が長野から車で送迎してくれた。


 東京の音大に進学しフルートを学び、2020年、卒業と同時にふるさとにUターン。長野市を拠点に演奏活動を始めた。しかし、折しもコロナ禍中。演奏させてもらえる場所がなく、この時期は「いろいろな曲が吹けるようにひたすら練習に打ち込んだ」。


 最初の仕事は同年12月、「出張!ごん堂びんずる市」での路上ライブだった。その後、22年1月から月に1回、地元若穂の温泉施設「湯〜ぱれあ」で無料のロビーコンサートを開始。初回、片手で数えられるほどだった観客は回を重ねるごとに増え続け、昨年9月の最終回には満席となり立ち見の人が壁を埋めるほどだった。昨年は1年間で県内外の80のステージに立ち、県内3カ所で単独公演も開いた。


 22年には、支えてくれている人や応援してくれている人に感謝を伝えたいと初のオリジナル曲を制作。その後も数を増やし、公演で披露している。


 公演で坂口さんは「これからも聴く人の心が笑顔になれるような演奏をしていきたい」と笑顔で話した。


 12月14日(土)、城山公園で開催のびんずる市に出演、来年3月22日(土)には、篠ノ井交流センターで単独公演を予定。FMぜんこうじでは毎週土曜日7時20分から50分まで「坂口実優ミニコンサート」を放送中。

 (問)ワカプロ中沢☎︎090・4607・6708

 記事・写真 中村英美


2024年11月2日号フロント

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