晴れた日の暗い時間 地中から様子を観測
夏本番を知らせるように、セミが鳴き始めました。
セミは一生の大半を土の中で幼虫として過ごします。ようやく外に出て成虫になっても、そこから1〜2週間しか生きられず、短い命を燃やすように一生懸命鳴くのです。
驚くことに、セミの幼虫が土の中から出て羽化を始めるのは、決まって「晴れた日の夕方から夜」なんだそうです。
でも、なぜ土の中にいるセミが、天気や今の時間が分かるのでしょう。実は、セミの幼虫は土の中から外に通じる穴を自分たちで掘り、穴の中から外の様子を何日も観測しているというのです。若い幼虫はまだ目が見えませんが、羽化直前の幼虫の視力は良く、晴れている日を選んで、地上に出てくるそうです。
晴れた日を選ぶのは「脱皮後の体や羽が早く乾くから」、暗い時間を選ぶのは「天敵に見つからないようにするため」とのことで、昆虫の本能に驚かされるばかりです。
さて、夏は太平洋高気圧が広く日本付近を覆うため、梅雨から一変して安定して晴れる傾向にあります。
ただし、太平洋高気圧が西日本から朝鮮半島付近で北に盛り上がるように張り出す天気図の日は要注意です。この気圧配置は等圧線の形から「くじらの尾形」と呼ばれていて、典型的な猛暑のパターンになります。
この天気図の時は、太平洋高気圧の上空にチベット高気圧が張り出してきて、日本列島が布団の2枚重ねのような状態になっているため、厳しい暑さが続きます。
この夏は猛暑が予想されていて、残暑も厳しくなりそうです。自分の体調を過信せず、可能であればセミのように天候や時間帯をみながら外出するようにしてください。
気象予報士・防災士
2023年7月29日号掲載