上昇気流に乗り空へ 一匹で越冬場所探し
キラキラと太陽の光を反射させながら細い糸が空を舞うのを見たことがあるかもしれません。ただの糸ではなく、「蜘蛛の糸」です。
これは、蜘蛛の「バルーニング」と呼ばれる行動です。お尻から出した糸が風に乗ると、その糸にぶら下がるようにして蜘蛛が上昇気流に乗って空に舞い上がっていきます。まさに気球(バルーン)に乗るように空を飛んでいくのです。
特に日差しで地表が温まって上昇気流が発生しやすい小春日和の日は「バルーニング」をするのに好条件と言われています。
夏から秋に生まれた子蜘蛛は、しばらく集団で過ごしたあと、たった一匹で空を飛んで越冬場所を探します。風まかせの旅は危なく感じられますが、上昇気流にうまく乗ると、数百キロ離れた場所まで飛んで行くこともあるそうです。
ちなみに山形県では、この光景が見られると、まもなく雪が降ることから、「雪迎え」と呼んで冬支度の目安にしていたそうです。
ところで、皆さんは小春日和の意味を正しく理解していますか。文化庁が行った調査では、約半数の人が春先に使う言葉と勘違いしていたそうです。
「小春」とは旧暦の10月の別名で、今の11月から12月初めごろにあたります。つまり、小春日和は晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな陽気のことで、春に用いる言葉ではありません。
島崎藤村は随筆「千曲川のスケッチ」の中で、「秋から冬に成る頃の小春日和は、この地方での最も忘れ難い、最も心地の好い時の一つである」とつづっています。
この冬は「ラニーニャ現象」の発生次第では寒くて雪が多くなるかもしれません。冬が始まる前のひとときを楽しみながら、これまで以上にしっかり冬の準備をしてください。
気象予報士・防災士
2024年10月26日号掲載