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「日本仏教看護・ビハーラ学会」の画文集にパステル画

善光寺白蓮坊住職で画家の若麻績敏隆さん

誰にも訪れる死

自ら考えるきっかけになれば

 病気になった女の子が、父親から死んだら命はどうなるかを教えられ、死の不安や恐怖から救われたという話を収録した画文集「自然法爾〜赤い風船〜」(風来舎)が刊行された。絵は、善光寺白蓮坊住職で画家としても活躍する若麻績敏隆さん(66)が担当。この10年ほどの間に描いてきたパステル画16点を掲載した。


 医療・福祉関係者や僧侶、大学教員らで構成し、仏教の教えを医療や福祉に生かす活動をする「日本仏教看護・ビハーラ学会」(千葉市、今井洋介会長)が創立20周年を記念して出版。文は、同会メンバーで国立がんセンター病院などで傾聴ボランティアを行っている田久保園子さんが、自身の体験を基にまとめた。自身の関わる患者から話をかたちに残してほしいとの要望を受けて同学会に相談し、絵本にする案が出た。


 絵は、同学会会長を務めたこともある若麻績さんに依頼。「田久保さんの話と私の絵に親和性を感じました。日本の仏教がお葬式など死後だけでなく、緩和ケアなど病気になった人やその家族に精神的な安心を与えることにつながれば」と快諾。編集作業の過程で、大人が読める画文集になった。


 若麻績さんは、美大生だった姉の勧めもあり、長野高校卒業後、東京芸術大学に進み日本画を専攻。同大学院修士課程修了後に、仏教系の大正大学大学院に入り、仏教を本格的に学んだ。画家としても東京や長野で個展を多数開いている。


 長野の山並みや高原の花や緑、湖など、懐かしいふるさとの自然の風景を想起させる絵を描き、病院などにも寄贈した。「絵を描く時は死を考えます。それは、死んだら終わりではなく、安心できる『ふるさと』に帰っていくというものです」と若麻績さんは話す。


 母親をがんで亡くした後に描き、彼岸のような光景が喪失感を和らげてくれたという軽井沢の風景「楽園の小径」のほか、画文集のために描いた「春の夜明け」はクライマックスに掲載。「この場面には、今までにない朝日が必要だと思い、新たに描きました。死への不安や恐怖が晴れた安心感や喜び、希望に加えて、以前から思い描いていた『私が死んだ翌日の日の出』のイメージも込め、個の死は相対的なもので、もっと大きないのちに包まれていることを含んでいます」。


 絵の魅力は「見た人それぞれが直感的に捉えられること。それは宗派や宗教を超えると信じています。誰にも訪れる死について、多くの人が自ら考えるきっかけになればうれしい」と若麻績さん。10月26日(土)17時から19時まで、白蓮坊で、「自然法爾」について「語る会」を開催する予定(無料、要予約)。

 記事・写真 斉藤茂明


 

 AB判変形、48ページ、2200円。「まいまい堂オンラインショップ」(https://maimaidou.thebase.in)のほか、白蓮坊で販売中。

 (問)白蓮坊☎︎232・0241


2024年10月5日号フロント

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