長屋が並んでいた町並み
再開発と時代の流れで懐かしい街の風景が消えていく中心市街地。今回の「まち歩き」は、昔の面影がわずかに残る裏路地を散歩した。案内人は問御所町出身の柳沢彩さん。南千歳町の「着物の殿堂 まるため」に勤務している柳沢さんは、藍染めの波模様がある白い着物に紫の羽織を掛けて参加。着こなしが涼感を誘い、夏の日差しによく合う。
「さまざまな店があり、職人が住んでいた裏路地は門前町の個性でした。残り少なくなった場所を紹介したい」と柳沢さん。幼少の頃に歩いたという路地を案内してくれた。
はじめに諏訪町の官庁通りから坂を下り、長屋が軒を連ねた面影を残す小路へ。着物の印章を染め抜く老舗があり、柳沢さんは染め抜きの文化にふれながら「皆さんの家に喪服など五つ紋の着物があったらぜひ大事にしてください。背、両袖、両胸に付けられた紋には家族を表す意味があります。また、9日のながの祇園祭では町ごとの法被の染めにもぜひ注目してほしい」と話した。
県立大がある通りを南へ進み、西後町の「すや亀」の脇道を抜ける。店の南には裾花川から取水した「北八幡川」をふさいでできた小路があり、並ぶ建物もレトロ感があふれる。
中央通りを横切り、問御所町へ。トイーゴ北の細い路地へ入る。木造の家が並んでいた記憶があるが、今は駐車場が目立つ。1879(明治12)年の市街図を見ると、この路地より東は耕作地が広がっていたが、1923(大正12)年の図では路地が増え、長屋がびっしりと並んでいた。今はわずかに残るのみだ。
上千歳町通りを横切り細い路地へ。南隣では10階建てマンションを建設中。「マンションが増え、子どもの声が街で聞かれるようになった」と柳沢さん。一方で時代の流れとはいえ、身近にあった町並みが消えていくのは寂しいようだ。
路地を抜けると鍋屋田小の北門。ここも懐かしい建物が残り、良い雰囲気。
最後は権堂アーケードのcafe&ワインバー「MIKENEKO STAND」で、参加者同士がまち歩きの楽しみ方や、市街地の思い出を語り合った。懐かしい店名が出たり、お気に入りの店を教え合う様子を見て、顔を合わせながら町の記憶を共有したり、魅力を伝える場がある良さを再認識した。
森山広之
2023年7月8日号掲載