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水中で越冬する虫

表面の水が凍っても 池の中は4度のまま

 冬は昆虫にとっても寒くて厳しい季節です。凍え死んだりしないよう、安全な場所を選んで冬を越しています。

 例えば、トンボは、秋に卵を産むものが多く、冬の間は卵や幼虫の姿で、池や田んぼの用水路などの「水の中」で過ごします。種類によっては何年も水中で暮らすものもいます。

 ここでこんな疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。寒さが厳しい日は水が凍り、死んでしまうのではないかと。

 結論から言うと、表面が凍ることはあっても、中は水のままなことがほとんどです。これを可能にしているのが、水特有の性質です。

 水の中に氷を入れるとプカプカ浮きますが、個体が液体に浮くのは、実は水だけです。自然界にあるものの多くは、同じ体積で比べると、液体よりも固体の方が重くなります。例えば、凍らせたエタノールを液体のエタノールの中に入れると沈んでいきます。

 水には4度の時に最も重くなるという特徴があるのです。

 このことを踏まえて、トンボが住む池で考えてみましょう。冬に気温が下がると、池の表面の温度が下がります。4度まで下がると表面の水は底に沈み、代わりにまだ冷やされていない下の水が上がってきます。これを繰り返すと、水全体が4度になります。さらに気温が下がると、表面の水温はさらに下がりますが、4度の水が一番重いため、冷えた水は下に行くことができません。こうして、表面は凍るものの、池の中は4度のままで、トンボの卵や幼虫は凍ることなく越冬できるのです。

 今年も身近な虫を通して、天気の話題をお届けします。気象予報ムシをきっかけに天気に興味を持ってくれる人が増えれば、こんなにうれしいことはありません。

 気象予報士・防災士


2023年1月1日号掲載

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