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花嫁はどこへ?

=2時間4分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で11月22日(金)から公開

(C)Aamir Khan Films LLP 2024

取り違えられた花嫁 その運命はどうなる

 2001年のインド。それぞれの結婚式を終えた2人の花嫁が満員列車で取り違えられた—。「花嫁はどこへ?」は、育ちも性格も全く異なる2人の女性が想定外の運命のいたずらに遭う中で、自らの人生を見いだしてゆく姿をユーモアを交えて描いたヒューマンドラマだ。


 しきたりに従い親の決めた相手と結婚式を挙げた2人の花嫁プールとジャヤは、夫の郷里に向かう列車に偶然乗り合わせた。同じ赤い花嫁衣装と、顔が全く見えないベールを深くかぶった2人。駅に到着し慌てて列車から飛び降りた花婿のディーパクは、妻のプールではなくジャヤを連れ帰ってしまう。間違いに気づき駅に引き返したものの、すでに列車は出た後。置き去りにされたプールは見知らぬ駅で、夫の家の住所も電話番号も分からず途方に暮れる。そんなプールに手を差し伸べたのは、駅で屋台を営む女主人だった。


 一方のジャヤはディーパクの家族に、うその名前と電話番号を告げ不可解な行動をとる。金品をだまし取る花嫁の詐欺事件が頻発していたことから警察はジャヤに疑いの目を向ける。


 内気で従順なプールは世間知らずで人に頼り切り。行動的で聡明なジャヤはミステリアス。まるで正反対の2人の花嫁の運命はどうなるのか。


 結婚式の写真でさえベールをかぶったままで顔は見えない。男は女を殴る権利がある—。まるで夫の物のように扱われ、美徳とされた恥の文化に支配された彼女たちの立場に同情せずにいられない。花嫁の持参金を自慢し合う親たちにもがくぜんとしてしまう。当時のインド社会の政治情勢や慣習を巧みに織り交ぜながら、自分らしく生きることの喜びを見つけてゆくプールとジャヤの輝く瞳が美しい。


 インド映画でおなじみの集団ダンスも歌もなし。インド社会に置かれた女性たちを描いた脚本にほれ込んだインドの国民的大スター、アーミル・カーンがプロデュースを務めている。


 海外の映画祭で高い評価を得て注目を集めた本作は、来年のアカデミー賞国際長編映画賞のインド代表に選出された。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年11月16日号掲載

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