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避暑をするアキアカネ

暑さに弱く夏は山に 秋になると里に移動

 長かった夏がようやく終わって秋になり、長野市内でも赤とんぼが飛び始める頃です。

 赤とんぼは、アキアカネの俗称です。漢字にすると秋茜と、特徴そのままの名前ですが、夏まではどうしているか知っていますか。

 アキアカネは、もともと寒い所で暮らしていたため暑さに弱く、真夏は標高1000メートル以上の避暑地で過ごします。そして秋になって山や高原の気温が10度を下回り始めると、里に降りてきます。

 猛暑の夏は避暑に出かけるものの、反対に冷夏の年は里からそれほど移動しないのだそうです。

 また、今よりもさらに気温が下がってくると、日なたぼっこをするアキアカネが見られるかもしれません。体が温まりやすい方向を見つけたアキアカネの集団が、皆で同じ方を向いて止まっていることもあります。

 秋の澄んだ高い空をアキアカネが飛ぶ光景はこの時季の風物詩ですが、なぜ秋の空は高く見えるのでしょうか。

 答えは三つあり、一つ目は、「空気の乾燥」です。夏は海で育った太平洋高気圧に覆われますが、秋は大陸育ちの移動性高気圧に覆われるため、空気中に含まれる水蒸気量が少なく、空が澄んで高く見えます。

 二つ目は「日差しの弱さ」です。春も移動性高気圧に覆われるのは同じですが、秋に比べて日差しが強く上昇気流が起こりやすいため、対流により砂ぼこりが舞いやすくなります。一方、秋は日差しが弱いことや夏の間に生い茂った草があること、秋雨で降水量が増えることなどから砂ぼこりが発生しづらく、空がかすみづらいのです。

 三つ目は、「雲の発生する高さ」です。秋は水蒸気が少ないため地上近くに雲ができづらく、空の高い所に雲ができます。

 農薬の使用や水田の減少により、アキアカネは全国的に減少傾向にあり、絶滅危惧種に指定している県もあります。童謡「赤とんぼ」で描かれる風景が、いつまでも続くことを願います。

 気象予報士・防災士


2024年9月28日号掲載

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