五感研ぎ澄ませ「姿」「声」探す
7月20日のまち歩きは、身近にいる野鳥を観察しながら歩く「門前、朝の探鳥会」。門前に住み、野鳥観察を始めて5年になるという日本野鳥の会長野支部会員・榊原美奈子さん(44)が案内してくれた。
朝6時に大門町に集合。参加者は、野鳥観察の経験がある人は少数で、初めての人がほとんど。記者もその一人だ。
冒頭、榊原さんは、用意してきた鳥ブローチを参加者に1羽ずつプレゼントしてくれた。粘土で造形し、彩色を施した自作の小鳥。特徴を正確にとらえて作られ、しかもかわいらしい。参加者は早速、帽子や服に着けた。
出発前から、善光寺郵便局(旧五明館)の屋上に取り付けられたテレビアンテナに鳥がとまっているのが見えた。「ピー、ピー」と大きく鋭い鳴き声は、ヒヨドリ。よく聞く声だが、これがヒヨドリとは初めて知った。
路地を歩き始めると、人家の間を何羽かのツバメが速い速度で飛び交う。春に日本に渡り、繁殖するツバメ。榊原さんは様子から、「近くに巣がありますね。多分、2回目の子育て中」と解説した。
次に現れたのは、電線に止まる小鳥。一見スズメのようだが、カワラヒワだという。羽根の一部が黄色く、高くかわいらしい「コロコロコロ」と鳴く声が特徴。一年を通して見られる留鳥で、街中に多いという。カワラヒワはこの日、あちこちで頻繁に見かけた。
武井神社で榊原さんは、双眼鏡を下げて鳥観察をする際のもう一つの楽しみ方も紹介。それは、社殿の彫刻を見ること。飛ぶ鳥、振り返る鳥など、鳥のモチーフにも着目してほしい―と話した。
道すがら、土蔵の扉の隙間に作られたスズメの巣や、電線の上で獲物の大きなセミをほおばるヒヨドリなどを見ながら、城山公園へ。
地面を速足で歩くハクセキレイに遭遇。白と黒のモノトーンの羽根色にスリムな体形に、参加者から「かわいい!」と歓声が上がった。閉館した城山公民館別館(旧蔵春閣)の高い屋根の周りにはツバメが飛び交っていた。
終盤、激しい「キョキョキョ」の鳴き声に榊原さんが緊張した表情に。「アオゲラです」。体長30センチと大きな日本固有種で、見る機会の少ない野鳥だという。参加者皆で木の周辺にしばらく目を凝らして姿を発見。飛び立つのを確認した。
この日に見た野鳥は11種類。鳥の姿や声を探して五感を研ぎ澄ませ、鳥たちを驚かさないように配慮している自分に気付いた。すがすがしく、優しい気持ちで探鳥会を終えた。
竹内大介
2022年8月6日号掲載