白鳥とコウモリ

=2時間25分
長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で9月4日(金)から公開

(C)2026「白鳥とコウモリ」製作委員会

人が人を裁く難しさ 社会問題と絡み合い

 7月23日、68歳で亡くなったミステリー作家の東野圭吾さん。絶大な人気を博し、映像化された作品も数多い。最新作の映画は、作家生活35周年記念作品として執筆されたヒューマンミステリー「白鳥とコウモリ」だ。

 東京で善良な弁護士白石健介が刺殺体で発見された。容疑者として逮捕されたのは愛知県に住む倉木(三浦友和)。しかもすでに時効となった過去の殺人事件も自供したため、世間は騒然となる。加害者の息子、倉木和真(松村北斗)と被害者の娘、白石美令(今田美桜)が共に抱いたのは、普段の父親たちの言動からはありえない違和感だった。東京、愛知と離れた地に暮らす2人の父親たちの接点は、いつ、どこで。そして何故殺された(殺した)のか。全く逆の立場で本来なら接触は許されない和真と美令だが、事件の真相を知るために2人は協力して動き出す。

 物語とともに映し出されるのは現代社会のいびつさだ。個人情報をインターネット上で無断公開され、拡散される悪意に追い詰められてゆく残酷さ。時効によって罰を逃れた殺人事件の犯人の罪は許されるのか。被害者でありながら捜査上の秘密として情報を提供しない警察にいら立つ遺族たちと被害者参加制度など、人が人を裁く難しさと社会が抱えるさまざまな問題が絡み合う。

 ミステリーでありながら物語を魅力的にしているのは、登場人物一人一人のキャラクターが丁寧に描かれていること。家族の絆と、人が人として生きることの苦悩が熱い人間ドラマを生み出してゆく。

 全てが明らかにされた時、事件の構造を根底から覆す驚き。白と黒の対照的なタイトルに込められた、いくつものテーマが絡み合う東野ワールドに、さまざまな感情が振り子のように揺れ動く。

 ロケシーンの中で印象深いのは焼き物の町として知られる愛知県常滑市の古い町並み。陶器が積み重ねられた「やきもの散歩道」や、ひなびた漁港が、禍々しいしい殺人事件と対極の静謐さに満ちている。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)

2026年8月29日号掲載