軍服を着た神様

=1時間47分
長野ロキシー(☎︎232・3016)で公開中
9月27日(日)13時の回上映後、遠藤監督の舞台あいさつがあります。

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台湾の「日本人の神様」 現地訪ね謎ひもとく

 台湾には「日本人の神様」がいるという。しかも、祭られているのは実在した日本の軍人。「軍服を着た神様」は、記録映像作家の遠藤が監督を務め、文化人類学者の藤野陽平と共に台湾を訪ね、日本人の神様の謎をひもとき、日本が台湾に残してきた戦争の痕跡を探ったドキュメンタリーだ。


 台湾各地に50カ所以上あるという日本神。立派なに祭られたものや簡素なまで、その地域に存在する神様の背景はさまざまだ。飛行機乗りの幽霊を祭った飛虎将軍廟に安置されているのはりりしい軍服姿の座像。名前は杉浦茂峰。ゼロ戦のパイロットで享年20歳。村人の命を救うため集落を避けて撃墜した英雄的戦士として、杉浦の物語は伝統的な人形劇となって語り伝えられている。


 東龍宮という廟には田中将軍をはじめ5人の日本人が祭られている。田中将軍は明治時代の軍人で、初期の台湾統治に関わっていた。


 1874(明治7)年、日本は台湾に出兵し、多数の戦死者を出した。亡霊となった日本兵たちがたたりを起こすと恐れた台湾の人々によって日本の軍人崇拝が始まったのだという。


 幽霊から神に変身した日本人兵士には、神になるのを認めた師匠がいて、修行を積んで出世すると次第に祭られた廟が大きくなるという。死者も生者も修行が大事という観念が台湾流であり、怪談として恐怖を抱く日本とはかなり違うようだ。


 飛虎将軍の祭りでは、きらびやかな冠と衣をまとった像がみこしに乗せられ、師匠と共に里帰りをする。法被姿の人々に担がれ通りを練り歩く姿は、日本の祭りを再現したかのような不思議な光景だ。


 日本の押し付けではなく、台湾の人々が自ら、さまよう日本兵の魂を大切に守り抜いてきた。日本が台湾に残した戦争の大きな傷がありながらも、国境を越えて死者を悼む台湾の人々の信仰心のあつさに驚かされる。
 戦後81年。日本人が忘れた歴史が台湾では脈々と受け継がれ、魂は今を生きている。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)

2026年9月19日号掲載