モネと時間旅行

=2時間6分
長野ロキシー(☎︎232・3016)で公開中

(C) STUDIOCANAL – COLOURS OF TIME – CE QUI ME MEUT – Emmanuelle Jacobson-Roques

遺品の中の一枚の絵画 隠された驚きの秘密

 ベル・エポック=美しい時代と呼ばれた19世紀末のパリには、後世に名を遺(のこ)す画家たちが集まっていた。「モネと時間旅行」は、ベル・エポックと現代を行き来し、ノルマンディーの屋敷とそこで発見された印象派の作品らしき絵画の秘密が明かされていく、ミステリアスで心温まる物語だ。

 現代のパリ。ある日突然、面識のない30人以上の親族が集められ、先祖の屋敷を売ってほしいと、土地開発を進める自治体から迫られる。1944年以来閉ざされたままの、ノルマンディーの草原にある古い屋敷だ。一族を代表した4人が遺産目録を作るため古い屋敷を訪れる。

 先祖アデル・ムニエ(スザンヌ・ランドン)が残した多くの遺品の中には、著名な写真家のサイン入りのポートレートや手紙、印象派の作品らしい一枚の絵画があった。

 アデルとはどんな女性だったのか。なぜパリに旅立ち、再び戻ってきたのか。調査する4人は、仕事も価値観もばらばらでそれぞれ悩みを抱えていたが、アデルの人生をひもとくなかで己の人生と向き合い家族の在り方も見つめ直してゆく。

 現代と過去の二つの時代に人間ドラマと芸術を織り交ぜた巧みな脚本を手掛けたのは、「猫が行方不明」(1996年)や「おかえり、ブルゴーニュへ」(2017年)などで知られるセドリック・クラピッシュ監督。写真家に憧れていた監督自身も写真の存在意義がこの作品の出発点だと語る。

 「睡蓮の庭」で知られる印象派の巨匠クロード・モネの没後百年の記念すべき年の公開。

 ルノワール、ドガ、セザンヌ、ジャン・コクトー、ビクトル・ユゴーら実在した芸術家が登場し、新しい芸術の夜明けを目撃するかのような息吹と感動がスクリーンからあふれ出る。独特の色使いやタッチで印象派の言葉の元となったモネの作品「印象・日の出」の誕生のエピソード。モネの絵画が展示されているオランジュリー美術館の「睡蓮の間」。オルセー美術館、アンドレ・マルロー近代美術館などで撮影された絵画たちが大スクリーンに映し出され、美術ファンが酔いしれるシーンが満載だ。映画のぜいたくさを存分に味わえる芸術の秋にふさわしい一本だ。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2026年10月24日号掲載

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