千曲市の美術館で「伝説の美術教師」飛矢崎さん回顧展

北信地域の風景画描き 多くの生徒に愛されて 「当時を懐かしんでもらえたら」

飛矢崎さんが足しげく出かけて描いた風景の代表4点を展示するスペシャルコーナーで、「夏の小田切ダム」の前で話すみさほさん(左)と布谷さん

 北信地域の風景画を中心に生涯に約3千点に及ぶ作品を残すとともに美術教師として多くの生徒に慕われた洋画家の飛矢崎(ひやざき)真守(まもる)さん(1922〜2012年)の回顧展が11月15日(日)まで、千曲市の市営美術館「アートまちかど」で開かれている。飛矢崎さんの一人息子で2005年に亡くなった雅広さんの妻みさほさん(76)=川中島町=は「義父が愛した信濃の風景を描いた作品群を1人でも多くの人に見てもらい、当時を懐かしんでもらえたらうれしい」と広く来場を呼びかける。

 飛矢崎さんは旧大下条村(現阿南町)生まれ。警察官だった父の転勤に伴い、北信地域で育った。県師範学校(現信州大教育学部)で絵画を学び、在学中に石井鶴三に師事。卒業

後、海軍従軍を経て、戦後は長野市内の下氷鉋中学校(現更北中)、川端中(現桜ケ岡中)、東部中に勤務。千曲市の戸倉上山田中には、1985(昭和60)年に定年退職を迎えるまで17年間勤めた。

 30代の頃は日展や一水会などで入選を重ねたが、40歳を過ぎた頃には評価を追うことを嫌い、出品をやめて小作品制作に専心。毎週末には、川中島町の自宅から、自転車に画材を積んでは写生に出かけた。「光と風が変わらないうちにその場で描き切る」ことを信念とした「現場主義」で、作品はその日のうちに仕上げた。好んで描いたのは犀川と富士ノ塔山、千曲川と八王子山、七二会笹平と北アルプス、小田切ダム、校舎など。身近にある心引かれる風景を季節ごとに、ありのままに伸び伸びとした筆致で描き続けた。

 同館が2018年に初めて開いた回顧展には、当時の同館最多記録1341人が来館。会場のノートには、個性的な風貌や熱血漢で生徒たちに愛されるキャラクターであったこと、「土の匂いのする風景を描きたい」と言っていたなど、教え子らからたくさんのメッセージが寄せられた。8年を経て、飛矢崎作品の管理をするみさほさんは「また見たいという人の声が思い出され、自分に多少なり余力があるうちに最後の展覧会を」と考え、同館に相談して実現した。 「伝説の美術教師 飛矢?眞守回顧展〜その画筆(ふで)で甦る、昭和の信濃」と題し、作品183点を展示。同館学芸員の布谷理恵さんは「先生が描き残した風景はすべて作家がほれ込んで、その時の光と風を感じて現場で描いたもの。改めて信濃の素晴らしさを感じてほしい」と話した。 

 会期中、同館1階で遺族の厚意による一部作品のチャリティー頒布会を開催。販売の収益金は千曲市の芸術振興に役立てられる。

 回顧展最終日の11月15日10時から11時、ギャラリートークを開催。「絵の向こうに、先生がいる」と題して、遺族、教え子、同館学芸員が飛矢崎さんの人となりやその作品世界について話す。参加無料、当日の観覧券が必要。
 月曜と11月4日(水)は休館。観覧時間は9時から17時(最終日15時終了)。観覧料は一般300円、高校生150円、中学生以下無料。

 (問)同館☎︎272・4152

※写真下:飛矢崎さんが戸倉上山田中に勤めていた50歳ごろに描いた自画像

記事・写真 中村英美

2026年10月24日号フロント

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