秋は「貯食」に忙しい時 体も脂肪蓄え冬の装い

冬の足音が聞こえるようになってきました。動物たちも長い冬に向けて準備を進めているようです。
冬眠しないニホンリスにとって、大切なのは冬の食料の確保です。餌が少なくなる冬に備えて、秋の間にクルミやドングリを地面や木の枝の間に隠す「貯食」をします。今が一年で最も忙しい時かもしれません。
以前、テレビ番組の気象キャスターをしていた時、「リスの冬支度」は秋の鉄板ネタでした。長野市の城山動物園に出向き、入念に冬支度に励むリスの愛らしい姿を取材したものです。
この頃のリスは、体つきも冬用へと変化していきます。秋は赤茶色の毛でほっそりしていますが、だんだん灰色の毛に変わり、耳やしっぽがふさふさに。体も脂肪を蓄えてふっくらし、冬の装いへと変わります。
さて、私たちに冬の訪れを知らせてくれるものの一つが、気象台から届く「初もの」の便りです。初冠雪、初霜、初氷、そして初雪と続きます。
ところが、この冬は「人の目で確かめる冬の便り」が全て終了します。初雪は7年前から自動観測に移行。初霜と初氷の観測も一昨年に終了し、この冬からは初冠雪の目視観測も行われなくなりました。
以前の初冠雪の観測といえば、「気象台の職員が実際に山を見る」というアナログな方法をとっていました。夜間や山頂が雲に覆われている時は観測できません。それでも、空を見上げ、山を眺め、季節の変化を目で確かめる。数字だけでは表せない温かみがあったように思います。
この冬からは、アメダスや気象レーダー、気象衛星などからの情報を活用した「解析積雪深」を使って、山頂付近の雪の積もり具合を把握します。1・以上の積雪で「初冠雪」となりますが、観測方法が変わるため、平年値との比較はできなくなります。
いつでも正確に観測できることは大きな進歩ですが、寂しさも感じます。リスが季節の変化を感じて冬支度をするように、私も五感を大切に冬の足音を感じたいと思います。
(気象防災アドバイザー・気象予報士・防災士)
2026年10月31日号掲載
