51 糖質中毒 ~「自分も?」と思う人多数?

 みなさんは三大中毒という言葉を知っていますか?

 そのうち二つの中毒は有名で、「アルコール中毒」と「ニコチン中毒」です。ではもう一つの中毒はなんでしょうか? それは「糖質中毒」です。

 アルコールやニコチンに中毒性(依存性)があるのは知っているけれど、糖質にもあるの?というふうに疑問に思われる方もいると思います。例えば「甘いものは太るからやめましょう」と医師や栄養士などから言われてやめると、しばらくは我慢できていても、だんだんと極度の禁断症状が出て、ついには食べ始めてしまって元の木阿弥になった人も多数いると思いますが、これがまさに「糖質中毒」の症状です。現代人の大半がこの三大中毒のいずれかになってしまっているといわれています。

 糖質を過剰に摂取すると、血糖値が急上昇することで、アルコールやニコチン、コカイン、そのほかの麻薬中毒と同様に、脳内にドーパミンという神経伝達物質の放出を促し、それにより「幸福感」がもたらされます。しかし、その数時間後には血糖値が急降下し、イライラするので、また糖質を欲しくなって取ってしまうという「糖質過剰摂取による負のスパイラル」を起こしてしまいます。

 2007年にフランスの研究チームが発表した研究は世界中に衝撃を与えました。この研究では、ラットに依存性薬物である「コカイン」と「砂糖水」を自由に選ばせたところ、驚くべきことに、ほとんどのラットがコカインよりも砂糖水を好んで摂取し続けたのです。

 これは、糖質が脳の「報酬系」と呼ばれる快楽を感じる部分を強く刺激し、薬物と同じようなメカニズムで強い依存性を生み出し、そして甘味の中毒性はコカインを上回ることを示唆しています。糖質は麻薬のようなもので、糖質がないと生きていけないかのような錯覚を起こし、依存してしまっている人が多いのです。つまり、「甘いものがやめられない」という感覚は、脳の仕組みに根差した問題でもあるのです。

 当院ダイエット科を受診される方のなかには、「アルコール中毒」や「ニコチン中毒」はないものの、「スイーツは毎日欠かさず食べないと気が済まない」とか、「仕事などでストレスがたまるとついお菓子に手が出てしまう」など「糖質中毒」と思われる症状を訴える方が多数いらっしゃいます(特に女性にそのような方が多い傾向があります)。

 禁煙外来を受診して、たばこはやめることができたが、たばこをやめたら口さみしくなって、甘いものをよく食べるようになり太ってしまったという人もよく見かけます。それは中毒が「ニコチン中毒」から「糖質中毒」に移行しただけであり、この三大中毒から離脱するのは、なかなか大変なことなのかもしれません。

 私は2010年より糖質制限の食事療法を中心とした教育入院である1週間の「ダイエット入院」を行っていますが、それは病院に入院してもらうことで、「糖質中毒」からの離脱を目指す目的もあります。「糖質中毒」の離脱には2~3週間を要するという説もありますが、「ダイエット入院」する方のほとんどが勤労者で忙しい方が多く、1週間と短めの設定にしています。糖質の取り過ぎが体に良くないことを頭では分かっていてもセーブできなかった人が、この入院をすることで糖質に対する強い欲求がなくなり、「糖質中毒」から離脱できたといううれしい言葉を言ってくださる方が多数います。

 みなさんいかがでしょうか。自分ではあまり認識していなかったかもしれませんが、「自分も糖質中毒だ」と思われた方が多いのではないでしょうか。私が行っているダイエット外来は、「禁酒外来」や「禁煙外来」にちなんで、「禁糖外来」という別名でもいいかなと考えています。

 〈第4土曜日に掲載〉

2026年5月23日号掲載

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