「がん免疫逃避機構」メカニズム解明

篠ノ井出身の医師 池田英樹さん(37歳)

池田さん(中央)がリーダーを務める呼吸器内科学教室の研究サブグループ。このグループで基礎研究を進めている=千葉大大学院で。池田さん提供

「後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞」受賞 「治療薬の開発につなげたい」

 篠ノ井出身で、千葉大学大学院医学研究院の特任助教を務める医師の池田英樹さん(37)=千葉市在住=がこのほど、日本の優れたがん研究を顕彰する「後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞」を受賞した。がん細胞が、体内の免疫システムから逃れる仕組みを世界で初めて解明した研究が高く評価された。池田さんは「歴史がある賞で、大変身が引き締まる光栄な思い」と受賞を喜ぶ一方、「これを実際の患者さんに役立てられるかはこれからの課題。研究の歩みを止めずに頑張らないといけない」と話した。

 池田さんは小学生の頃、母親が病気がちだったことをきっかけに医師を志すようになった。長野高校を卒業し千葉大学医学部に進学。同大卒業後、医師の初期研修の時に、肺の病気で亡くなる多くの患者を目の当たりにした。参考となる臨床研究が少ないと感じながら自分で本気で勉強して診療に当たった。こうした経験があって呼吸器内科を専門に選んだ。
 その後、主治医として同世代の肺がん患者をみとったことを契機に、「目の前の患者さんの診療に当たる一方で、自分でももっといい治療法や検査法を開発しなければいけない」と実感。研究手法をもっと深く学びたいと、医師になって7年目の31歳の時大学院に入り、医学博士号は通常より1年早い3年間で取得した。

授与された「後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞」賞状=池田さん提供

 今回、受賞対象となった研究は、大学院時代から5年をかけて挑んだ「腫瘍微小環境におけるミトコンドリア伝播(でんぱ)によるがん免疫逃避機構」について。本来がん細胞への攻撃役である免疫細胞「T細胞」に、がん細胞が自身の異常なミトコンドリアを移すことで正常なミトコンドリアと入れ替え、免疫の攻撃力を低下させているというメカニズムを世界で初めて突き止めた。この発見は、これまで効果が出にくかったがん免疫療法の耐性問題を克服する一助になると期待されている。

 「がんだけでなく、人の病気や健康の基盤にミトコンドリアの活動が関わっている—というメカニズムの重要性に世界中の研究者に気づいてもらい、それに関する探索や開発が始まったらうれしい」と池田さん。「基礎研究が患者さんの治療に役立つ『社会実装』までには10年、20年と長い時間がかかるかもしれないが、いろいろな病気の患者さんたちが恩恵を受けられる治療薬の開発につなげたい」と強い思いを言葉に込めた。

記事 中村英美

2026年8月22日号フロント

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