骨折は痛くて日常生活も不便になるが、生命に悪影響を及ぼすほどのものではないと思っていませんか? しかし、骨粗しょう症から骨折に至ると、寝たきりになるリスクが高く、命にも関わります。

骨粗しょう症とは、さまざまな原因により骨の量が減ったり質が悪くなったりして骨の強度が低下し、骨折を起こしやすくなる病気のことです。日本の推定患者数は1300万人もいて、その約8割が女性です。
骨は成長期に作られ、20代でピークを迎え、40代以降で年齢とともに減少していきます。骨は血液や皮膚と同じように新陳代謝を繰り返しており、古い骨は破骨細胞という細胞により破壊・吸収(骨吸収)され、その壊れた部分を骨芽細胞という細胞が新しい骨に再生(骨形成)します。この一連の過程は約3カ月で行われ、常に全骨格の3~6%で新陳代謝が行われています。これにより骨組織は強度を保ち、また骨の役割の一つであるカルシウムを貯蔵・供給する機能を果たしているのです。
骨粗しょう症は、骨形成と骨吸収のバランスが崩れ、骨密度の減少や骨の強度が下がることで起こります。では、なぜ骨吸収と骨形成のバランスが崩れてしまうのでしょうか。女性では閉経が最大の要因です。人の骨の量(骨量)は18~20歳でピークに達し、加齢に伴い減っていきます。女性ホルモンのエストロゲンには破骨細胞の働きを抑える作用があります。閉経してエストロゲンの分泌が減ると破骨細胞の働きが活発になり、骨形成と骨吸収のバランスがくずれ、骨量は急激に落ち込みます。このため女性の骨粗しょう症は60代から急増するのです。
もう一つの大きな要因は老化です。もともと骨形成は骨吸収よりも時間がかかります。男女を問わず老化によって新陳代謝のスピードが遅くなると、やはり骨量は減っていきます。従って、男性は閉経などでホルモンの変化の影響を受ける女性より遅れて70代から骨粗しょう症が増えてきます。
若い女性も骨粗しょう症は人ごとではありません。モデルのようにスリムな体形に憧れて無理なダイエットを重ねると、女性ホルモンの分泌量が減り、生理不順とともに骨量低下を招いてしまいます。
一方、中高年の男性に増えているのが、骨量ではなく、骨の質(骨質)が低下して折れやすくなる骨粗しょう症です。骨の強さは70%が骨量、30%が骨質で決まるとされていますが、骨質の低下の原因は糖尿病などの生活習慣病です。骨を鉄筋コンクリートのビルにたとえると、コンクリートはカルシウム、鉄筋はコラーゲンです。そのコラーゲンが生活習慣病によって糖化や酸化することで弾力性を失い、骨がガラスのようにもろくなるのです。
骨粗しょう症になると全身の骨がもろくなりますが、(1)背骨(2)脚の付け根(3)上腕の付け根(4)手首―の4カ所は、特に折れやすい部位です。転倒や尻もちなどのちょっとした衝撃でも、簡単に折れてしまいます。なかでも最も多いのは背骨の圧迫骨折です。自身の体重で徐々につぶれていき、痛みがないことも多いので「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。圧迫骨折が起こると、背中や腰が曲がって内臓を圧迫し、食欲不振や便秘、逆流性食道炎などを招くこともあります。
また、深刻な結果を招くのが脚の付け根の骨折で、そのまま寝たきりになってしまうことがよくあります。そうすると誤嚥性肺炎や心筋梗塞、脳梗塞による死亡リスクが高まってしまうのです。
次号は、骨を強くする方法について述べる予定です。
2022年12月24日号掲載
