毎日6時間以上寝ているのに、朝起きると疲れが取れていないというようなことはありませんか? それは睡眠の質が悪い証拠かもしれません。

フランスの英雄ナポレオンや日本の医師で細菌学者の野口英世は、1日3時間の睡眠で十分であったといわれるのに対し、20世紀を代表する物理学者のアインシュタインの1日の平均睡眠時間は10時間といわれているように、個人の体質や生活環境で、最適の睡眠時間は異なるとされています。
睡眠で最も大切なのは、睡眠の「量」ではなく「質」を高めることなのです。睡眠の質は、眠り始めの90分で大きく左右されます。その最初の90分をいかに深く眠るかが重要なポイントです。そして、睡眠の質を高めることはアンチエイジング(若返り)にもつながります。
前回述べさせていただきましたが、睡眠の質を高めるには、メラトニンの分泌を高める生活習慣を身に付けることが重要です。それではその方法について具体的に見ていきましょう。
まずは生活リズムを整えることが重要です。毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝るように意識します。そして日中に光を浴びることも大切で、起きてすぐにカーテンを開けるようにした方が良いと思います。体内時計は数日では調整できませんので、長期にわたって良い睡眠リズムを身に付ける必要があります。
就寝直前に食事をしないことも大切です。食後すぐに就寝すると、体は食べ物を消化するのにエネルギーを使うため、内臓が休む時間が少なくなります。そのため、ぐっすり眠れなくなるのです。食べ物が胃の中で消化されるのに約3時間かかるといわれています。就寝前に消化が完了するのが理想なため、就寝の3時間前までに食べ終えましょう。それは逆流性食道炎の予防にもつながります。
運動習慣を持つことも睡眠の質を上げるには有効です。運動することで体は肉体的に疲れるため、入眠後すぐに深い眠りになりやすくなります。ただし、就寝直前の運動は、脳が覚醒し寝つきが悪くなるので注意が必要です。
睡眠の質を上げるのに、体の中心部の深部体温の低下も有効といわれており、それに役立つのが入浴です。入浴すると、体温が1度くらい上昇しますが、入浴後は血管が拡張し熱が放散されやすい体になり、結果として体温が下がっていきます。就寝の約1~2時間前に、40~42・5度の入浴が理想といわれています。
現代人が特に気を付けなければいけないのは、寝る前のスマホやパソコンの操作です。これらの電子機器が放つブルーライトは太陽の光に近い性質のため、脳が昼間だと時間を誤認識して、覚醒してしまいます。その結果、「なかなか寝付けない」「眠りが浅い」などの睡眠障害につながり、睡眠の質を低下させてしまいます。スマホやパソコンの操作は、できれば就寝2時間前、最低でも1時間前にはやめるように心がけましょう。
さらに、眠る時に必要な副交感神経の働きを鈍くするカフェインを控えたり、寝酒・迎え酒をやめたりすることも、睡眠の質を下げないためには重要です。寝酒がやめられないという人もいますが、アルコールは質の悪い睡眠薬といわれており、どうしてもアルコールを飲まないと眠れないという場合は、病院の睡眠外来を受診し、副作用が少なく依存性の少ない睡眠薬を処方してもらった方がいいでしょう。
以上のように「生活リズムを整える」「就寝前に食事をしない」「運動習慣を持つ」「就寝1~2時間前に入浴する」「寝る直前にスマホをしない」「寝酒をしない」などが、睡眠の質を高める上で重要であることを認識していただければと思います。
2023年3月25日号掲載
