日本人は、諸外国と比べて、医者に行ったときの薬の処方が多いといわれており、「薬漬け」という言葉も時折使われます。

その一つの原因として、前回述べました医療の細分化が挙げられると思います。「消化器内科」「循環器内科」「脳神経外科」「整形外科」というように複数の診療科を受診することが多く、それぞれの専門の先生がそれぞれの疾患の最大限の治療を行うことにより、必然的に薬が増えていきます。その中には同じような薬の作用のものがあったり、別の科で出た薬の副作用に対する対策で薬が増えていくようなケースもあったります。例えば、整形外科で処方された痛み止めの影響で胃潰瘍になってしまって、消化器内科で胃薬を処方するなど、このような事例は挙げたら切りがありません。
あともう一つ原因として考えられるのは、医師が生活習慣の是正を促さず、容易に薬を出してしまうことです。例えば、健康診断で高血糖、高血圧、脂肪肝が指摘され、内科を受診したとします。そのような人の大半は肥満が元凶なのですが、肥満の改善を促すような食事指導は行わず、いきなり糖尿病の薬、高血圧の薬、肝機能改善の薬を処方する医師もいます。そうすると見かけ上データは良くなりますが、薬のおかげでデータが良くなっているだけなので、永遠に薬をやめることができません。対症療法をしているだけなので、根本的には病気も良くなりません。
医師の側からすれば、薬を出すのは手っ取り早く、患者さんがさばけます。また患者さんの側からしても、生活習慣を変えるのは大変なことであり、薬を飲むのは楽だという一面もあります。まして日本の医療費は、国民皆保険であり、そんなに高くないということもあります。このような理由から、国民全体として生活習慣病の薬が減らないどころか、増加しているのです。
生活習慣病として、糖尿病、高血圧、肥満などが有名ですが、これらの疾患には、多額の医療費がかかっています。日本生活習慣病予防協会によりますと、糖尿病の患者数は2016年の時点で1千万人であり、糖尿病の医療費の総額は、年間1兆2千億円になるとのことです。さらに糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患や脳血管疾患にも密接に関わっており、がんも発生しやすくなることから、糖尿病に関連する年間総医療費は1兆2千億円の何倍、何十倍にも匹敵すると思われます。高血圧の総患者数も17年現在約1千万人で、高血圧性疾患の年間医療費は1兆8千億円にのぼります。
肥満による医療費総額の概算のデータはありませんが、肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症とオーバーラップすることが多く、肥満の人はがんにもなりやいため、肥満関連疾患の医療費総額は年間数兆円から数十兆円になると思われます。途方もない金額ですよね。
この記事を読まれている人の中には、定期的に薬の処方を受けている人もいると思いますが、自費でも同様の治療を希望されるでしょうか? 薬代が3倍、5倍、10倍とかかるなら、飲まなくて済む方法をもっと一生懸命に考えるのではないでしょうか。そういう意味では、現在の日本の医療政策は患者さんを過保護に優遇しすぎているために、患者さんが真剣に病気と向き合わないのだと私は思います。今後も薬漬け医療を続けていくなら、消費税を20%、30%というように引き上げていかなければいけないかもしれません。
薬漬け医療は私たち医療者や政策の影響も大きいですが、患者さんによるところも大きいです。今薬を飲まれている人は、生活習慣を是正して薬を少しでも減らす、あるいは飲まなくて済むようにしていただければと思います。
2023年8月26日号掲載
