01 健康寿命とは ~理想は「不健康寿命は短く」

 厚生労働省によると、2020年の日本人の平均寿命は女性が87.7歳で世界1位、男性が81.6歳でスイスに次いで世界2位です。織田信長が好んだといわれる「敦盛」の舞のフレーズである「人間50年」は有名ですが、いつから日本人は長寿になったのでしょうか。

 第2次大戦後の1947年の平均寿命は男性50歳、女性54歳とまさに「人間50年」の時代で、その前はもっと短命でした。当時の死因のトップは「結核」、2位「肺炎・気管支炎」、3位「胃腸炎」と、上位全てを感染症が占めていました。その後、医学や科学技術の飛躍的な進歩、国民の栄養状態の改善、上下水道の整備による衛生状態の改善などにより、感染症による死亡率は激減し、この70年ほどで平均寿命は30年以上延びました。

 現在はどうかというと、2020年の死因トップは悪性新生物(がん)の 37万.8356人(27.6%)、2位は心疾患20万5518人(15.0%)、3位は老衰13万2435人(9.6%)でした(厚生労働省調べ。図参照)。新型コロナウイルス感染症による20年の死者数が3466人(0.25%)であることからみても、がんの死亡率の高さが分かります(新型コロナの100倍以上)。がんによる死亡は戦後右肩上がりで上昇し、3~4人に1人ががんで死亡していることになります。

 長野県の平均寿命はどうなっているでしょうか。20年の都道府県別「平均寿命ランキング」では、男性が滋賀県に次いで2位、女性が1位になっています。県健康福祉部によると、「県民の高い就業意欲や積極的な社会参加などの健康に対する意識の高さ」「地域において医療保健活動が活発に行われたこと」「健康ボランティアの活動が活発であること」などが長寿の要因として挙げられます。私自身もさまざまな県で診療を行いましたが、他県と比較して長野県民の人間ドック・がん検診の受診率の高さや健康意識の高さは、日々身をもって感じられます。

 ところで、みなさんは健康寿命という言葉をご存じでしょうか。健康寿命とは00年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。つまり介護を受けていたり、寝たきりだったりではない、生活に支障のない完全に健康な期間のことです。逆に言えば、平均寿命と健康寿命の差に当たる期間は日常生活に制限のある「不健康」な期間というわけです。19年の日本人の健康寿命は男性が72.7歳、女性が75.4歳。平均寿命と健康寿命の差は男性が8.7年、女性が12.1年となり、この差は少しずつ縮小していく傾向にあります。

 100年生きるのが当たり前になる「人生100年時代」が近々到来するといわれていますが、充実した人生を過ごすには、健康寿命は長く、不健康寿命は短くというのが理想です。そして、健康寿命を延ばすには、肥満・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の予防、人間ドックやがん検診によるがん予防が重要です。

 私が昨年4月著した「やぶ患者になるな!」(幻冬舎)に健康寿命を延ばす秘訣について詳しく書いています。週刊長野の月1回の連載でも役に立つ話を書いていきますのでぜひお読みいただければと思います。
 〈第4土曜日に掲載〉

 【まえかわ・さとし】
1975年大阪府生まれ。産業医科大学卒。厚生連松代総合病院ダイエット科部長、消化器内科部長。これまで行った内視鏡検査・治療は3万件以上。同病院では糖質制限による食事療法・行動療法・運動療法を組み合わせた減量プログラム「ダイエット入院」を実施している。著書に「やぶ患者になるな!」「イラスト&図解 ゼロから知りたい!糖質の教科書」「いちばん見やすい!糖質量大事典2000」(監修)など。

2022年3月26日号掲載

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