16 薬依存の治療の害 ~多剤服用の副作用注意を

 諸外国から日本人は薬好きの民族だといわれています。特に高齢者では薬を飲んでいる人が大半であり、年齢を重ねれば重ねるほど、飲む薬の量が増えていく傾向にあります。

 人口の高齢化が進んだこともあり、私が医師になった二十数年前と比べても、多くの薬を服用している人の数は格段に増えたと思います。年齢を重ねると、さまざまな病気になり、定期的に受診する診療科が増え、それぞれの科からさまざまな薬が処方されることが多くなります。

 例えば、以前脳梗塞になって脳神経外科に入院したことがあり、その後は定期的に脳梗塞予防の薬が処方され、整形外科では膝の痛みに対し痛み止めの処方、消化器内科では逆流性食道炎の薬の処方、糖尿病内科では糖尿病薬の処方、循環器内科では高血圧と不整脈に対する処方というようにさまざまな科から薬が処方され、結果的にたくさんの薬を毎日服用するという具合です。なかには10種類、20種類といったものすごい量の薬を内服している人もいます。

 このように多剤を内服している高齢者は、自分が何の薬を飲んでいるのかを把握しておらず、「先生におまかせ」という人がほとんどです。このように一方的に医師まかせで、どんな薬を飲んでいるかも分からず、ただひたすら医師の指示通りに薬を飲んでいれば良いのでしょうか。私はそう思いません。薬は毒にもなり得るからです。

 高齢になると代謝が悪くなるのはみなさんもご存じだと思いますが、薬の代謝も悪くなります。現在の日本では、「高齢になると薬をたくさん飲むのは当たり前」というような風潮がありますが、逆に高齢者ほど薬の服用は少ない方が良いのです。

 海外では、5種類以上の薬を内服することを多剤服用(ポリファーマシー)と呼んで、何らかの有害事象を起こしやすい状態であると警笛を鳴らしています。一方、2018年5月に厚生労働省から出された報告によると、75歳以上の日本人の約4割が5種類以上、約4分の1が7種類以上の内服薬を服用しています。したがって、かなり多くの日本人が多剤服用を常習化した危険な状態であるといえます。

 それでは高齢者に特徴的な薬の副作用とはどのようなものがあるのでしょうか。一般的によく起こる薬の副作用として、湿疹が出現するようなアレルギー症状や肝障害、腎障害が有名だと思います。しかし、高齢者の薬の副作用として多いものは、ふらつき・転倒、抑うつ、記憶障害、食欲低下、便秘、排尿障害・尿失禁などが挙げられます。

 これらの症状は薬を飲んでいなくても、高齢者によく見られる症状であるため、本人や家族、さらには医療者ですら気付かず、発見されにくい特徴があります。薬の飲み過ぎで、転倒して大腿骨を骨折して寝たきりになったり、認知症になってしまったり―なんて、本末転倒だとは思いませんか?

 これまで私が行ってきた日常診療においても、このような多剤服用の副作用が原因で、健康寿命が短くなってしまったのではないかという人が多数います。

 やはり薬の服用が少ないに越したことはないのです。特に高齢者の場合はそうです。5種類以下ならいいというわけでもないと思います。3種類でも相互作用を起こすかもしれませんし、1種類でも副作用は起こり得ます。できれば薬なしで、健康でいられることが体にとって一番良いのです。

 それでは、どのようにすれば薬を減らせるのでしょうか。やはり生活習慣の改善が重要だと思います。糖尿病なら糖質を控え、高血圧なら塩分を控えるなど、生活習慣を是正するだけで飲まなくて済む薬はたくさんあります。薬を常用している人は、今一度、本当に飲まなければいけない薬どうかを見直してみてはいかがでしょうか。

2023年6月24日号掲載

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