20 腸年齢を若く保つ ~最も重要な「食生活の改善」

 アンチエイジングの研究が進むにつれ、老化とは病気のような側面があり、老化のメカニズムを解明すれば老いの進行を抑えられるという見方が広まりつつあります。そのなかで腸内環境が老化を左右する重要な要素として注目を集めています。

 体が慢性的な炎症状態になり、細胞や組織が傷つくことで老化が進行することを以前の記事で述べました。こうした炎症は、腸内細菌と深く関係しており、腸内環境を整えることで炎症、ひいては老化が抑えられると考えられています。また、腸内細菌は免疫力とも密接な関わりがあります。新型コロナウイルスの感染では、腸内環境が悪いと重症化しやすいことがわかっています。

 腸内細菌の種類や比率から重症化を予測する研究も進んでいます。それでは、どのような腸内環境が老化を予防する上で望ましいのでしょうか。それは、腸内細菌の多様性が保たれていることが重要とされています。ヒトの大腸には約1千種類ともされる腸内細菌が存在しています。国や地域、食生活で、菌の種類や割合は異なりますが、加齢とともに、その種類や数が減り、多様性が損なわれると、健康に悪影響を及ぼし、老化につながります。

 日本人の腸内細菌はビフィズス菌が多いのが特徴の一つで、日本人の長寿に関係している可能性があります。日本人の大半が、乳糖を分解する乳糖分解酵素をあまり持っていません。そのため、牛乳などに含まれる乳糖を小腸で分解・吸収することができず、乳糖は大腸にそのまま到達してしまいます。

 一方、ビフィズス菌はこれが大好物で、小腸で吸収されず大腸に届いた乳糖がビフィズス菌の餌になり、ビフィズス菌を増やすことにつながっているようです。ビフィズス菌は体にとって有用な働きをする善玉菌の代表格です。長寿にも関わっており、健康長寿の人の大腸には高齢になると減るはずのビフィズス菌や酪酸菌が多いことが分かってきました。

 ただ、こうした多様性や特徴は、環境変化の波をもろにうけます。都市化や工業化、抗菌剤などの薬剤使用、きれい過ぎる環境などで、腸内細菌の多様性は乏しくなってきています。

 実際、若い人ほど腸内細菌の多様性が失われているという研究もあります。腸内細菌の多様性の構築は長い時間が必要ですが、あっという間に失われてしまいます。

 腸年齢を若く保つために最も重要な要素は、食生活の改善です。肉よりも魚、ナッツや豆類、オリーブオイルを多く含む食生活をすることで、心臓疾患などを抑制し、腸内細菌に良い変化をもたらしていることも分かってきました。

 また、ゴボウ、アボカド、納豆、オクラやモロヘイヤに多く含まれる短鎖脂肪酸は、ビフィズス菌や酪酸産生菌が作り出し、腸内環境を弱酸性に整えて、腸年齢を若く保つ役割をしています。ビフィズス菌にはストレスを軽減する効果もあるとされ、認知機能の改善に役立つという研究もあります。まだ効果検証が十分に進んでいませんが、日本食は、魚や豆類などを多く使い、さまざまな発酵食品があるため、腸内環境の改善には有効ではないかと推測されています。

 逆に腸内環境において不健康とされるのが、高脂肪食や高単糖食(砂糖や果物、菓子類の過剰摂取)です。これらの食物は腸内細菌の力を借りずに小腸で消化吸収されてしまう上に、食物繊維が少ないため、食物繊維を餌とする大腸内の細菌の役割が果たせなくなり、衰えていってしまいます。

 腸内環境の改善は、現在のおなかの調子を整えているだけではありません。10年、20年先の健康維持につながっているという考えを持って食生活の改善に努めることが、腸内環境を良く保ち、腸年齢を若く保つ秘訣ではないでしょうか。

2023年10月28日号掲載

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