47 カロリー制限食との比較 ~有効性で糖質制限食に「軍配」

 糖尿病や肥満症の食事療法は、日本ではカロリー制限食が主流となっています。欧米においても、糖尿病や肥満症の治療として、かつてはカロリー制限食が推奨されてきました。しかし、1990年代前半から糖質制限食が注目されはじめ、今やカロリー制限食に代わる食事療法として普及しつつあります。ただ、日本ではそのような医学論文が少なく、特に糖質制限食が肥満に有効であることを示す論文は存在しませんでした。

 そこで私は、糖質制限食とカロリー制限食を比較検討することにしました。以前勤務していた新潟労災病院の肥満外来を受診した患者さんを糖質制限群とカロリー制限群に分けて、1年後の変化を調べたのです。

 両群ともに体重は減少していますが、糖質制限群の方がより体重が減少していました(カロリー制限:-4・6kg、糖質制限:-8.5kg)。体重減少に伴って、やはり糖質制限の方がカロリー制限よりも、内臓脂肪、皮下脂肪ともに減少していました。一般的には皮下脂肪よりも内臓脂肪の方が落ちやすいといわれており、この研究でもそうなっています。

 「日本はコメ文化だから、糖質制限なんて向かない」と言っている医師がいましたが、論より証拠で、むしろ、欧米の研究以上に、糖質制限の方がカロリー制限よりも有効という結果になりました。日本人は欧米人と比較して、丼物やラーメン、すしなどの糖質を多く含む単品メニューを好んで食べる傾向にあって元来糖質摂取の割合が多く、それを減らすことに主眼を置く糖質制限食は取り組みやすいため、遵守率も高くなり、体重減少が顕著に現れたのではないかと私は考えました。

 このように内臓脂肪が減少すると、ほぼすべての生活習慣病が改善します。HbA1cは過去1~2カ月の血糖の平均値を表していますが、やはり糖質制限群の方が顕著に低下していました。空腹時血糖値ももちろん糖質制限群の方がカロリー制限群よりも低下傾向を示しました。

 また、中性脂肪の値についても、糖質制限群で短期間に低下し、著明な効果を認めています。HDL―コレステロールは善玉コレステロールとも呼ばれ、値が高いほどいいのですが、糖質制限群の方がカロリー制限群よりも上昇しており、脂質異常症に対しても、糖質制限食の方が有効でした。

 とりわけ糖尿病は血糖値が高い状態なので、冷静に考えれば、糖尿病の食事療法としては、カロリーが高い脂質を減らすよりも糖質を減らす方が有効というのは当然の結果です。

 糖質制限食は、肉や魚、炒め物や揚げ物など従来カロリー制限食ではカロリーが高くて好ましくないとされていた食品や料理を制限することなく食べることができることや、煩雑なカロリー計算を行う必要がなく、糖質のみに注意すればよいという取り組みやすさの特徴があります。そういう点で糖質制限食がカロリー制限食よりも体重減少効果をはじめ、さまざまな有効性を示したものと私は考えました。

 患者さんからの聴取によると、実際の糖質制限の食生活は、これまでのご飯などの主食中心の生活から、副食とされる肉や魚を中心とした食生活に変容し、糖質量が少ない野菜の摂取量も増えることで、糖質制限を成功させている方が多い傾向がありました。

 このような私自身の研究結果を踏まえ、日 常診療において、糖尿病や肥満症などの生活習慣病の食生活の指導では、カロリー制限食ではなく糖質制限食を推奨しています。読者の皆さんで、糖尿病や肥満症に悩んでいる人も多数いらっしゃると思いますが、そういう方には糖質制限食は非常に有効です。

 ただし、糖尿病薬を服用中の方は糖質制限により低血糖を起こす可能性がありますので、実践する場合は主治医の先生と相談してから行ってください。

〈第4土曜日に掲載〉

2026年1月24日号掲載

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