老化の3大要因の一つ「炎症」について。
私たちの体には約37兆個の細胞があり、日々古い細胞が新しい細胞に置き換わる新陳代謝が行われていますが、なぜか死なずに、臓器や組織の中に残ってたまっていく細胞があり、それらの細胞は「老化細胞」と呼ばれています。この老化細胞は、まるで死体がよみがえるように、慢性炎症を起こす物質を出して周囲の細胞の老化を加速させて仲間を増やし、組織や臓器の機能を低下させるゾンビのような細胞です。

このように老化細胞が蓄積され慢性炎症が誘発されると、がんや動脈硬化など加齢に伴って増える病気を発症させることが近年の研究で分かりました。老化を起こす慢性炎症は、内臓などで長時間くすぶり続ける炎症で、炎症が起きていることを自覚することはありません。
老化細胞が蓄積され慢性炎症が誘発されると、がん、心血管疾患、糖尿病、白内障、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、アルツハイマー型認知症、骨粗しょう症、変形性膝関節症など、加齢によって増えるさまざまな病気につながることが分かっています。また最近では、新型コロナウイルスで高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある人が重症化しやすいのは、老化細胞が蓄積し慢性炎症を起こしていることが一因である可能性が指摘されています。
では、老化細胞をためず慢性炎症を起こさないようにするにはどうしたらよいでしょうか。一番有効なのは、肥満(特に内臓脂肪蓄積)を防ぐことです。肥満の人は、腸内細菌叢(そう)が変化して悪玉物質が増加しており、それが肝臓に運ばれることによって老化細胞がたまって慢性炎症を起こし、肝臓がん、大腸がんなどのがん、糖尿病、認知症などにつながるといわれています。
また、定期的に適度な運動を続ければ、老化細胞の蓄積を抑えられる可能性も指摘されています。マウスの研究では、有酸素運動をさせると老化細胞がたまりにくくなり、糖尿病リスクも改善していました。ウオーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は生活習慣病を防ぎ健康維持に役立つばかりか、老化細胞の蓄積を防ぐことにもつながるかもしれません。
もう一つ、老化細胞の蓄積を防ぐために重要なのは、DNAを傷つけないようにする体に優しい生活です。喫煙、PM2.5(微小粒子状物質)、過度の紫外線、過度の飲酒は、修復不可能なDNAダメージを引き起こし、老化細胞の蓄積・慢性炎症を誘発し、がん発生などの老化を促進します。家族や同僚などの喫煙による受動喫煙も含めて、DNAダメージの要因を避けることが大切です。
生活習慣の改善による老化細胞の蓄積予防とは別に、老化細胞そのものを除去する薬(セノリティクス/老化細胞除去薬)により加齢性疾患を減らし、寿命を延ばす研究が進められ、期待が高まっています。人体の細胞を用いた研究も進められていますが、数年で実用化されるというような段階ではなさそうです。
やはり老化細胞の蓄積・慢性炎症の予防には、肥満予防を中心とした生活習慣の改善が最も重要であることは間違いありません。そして肥満予防・治療に最も有効なのは、これまでもふれてきました「糖質制限」です。
これまで老化の3大要因「糖化」「酸化」「炎症」について詳しく見てきましたが、三つに重複する生活習慣の問題も多かったと思います。ぜひ折にふれて記事を読み返し、老化の予防に努めていただければと思います。
2022年8月27日号掲載
