認知症とは、認知機能が低下して日常生活全般に支障が出てくる状態のことをいい、人口の高齢化に伴い、認知症を発症する人は年々増加しています。2012年には462万人でしたが、20年は600万人を超えたと推計されています。25年には730万人(65歳以上の5人に1人)、30年には830万人、40年には953万人、50年には1016万人に増加すると予想されています。
認知症は本人や家族の生活に大きな影響を与え、介護を要するケースが多くなります。近年では、介護が必要になる主な要因で最も多いのは「認知症」で、「脳卒中」や「高齢による衰弱」などよりも多くなっています。そうしたことから、「自分が認知症になったらどうなるのか」「認知症は予防できないのだろうか」などと考える人も多いと思います。
こうした深刻な事態が進む中で、研究が進んでいるのが「認知症の予防」です。認知症の発症そのものを完全に防ぐことは残念ながらまだ難しいとされていますが、発症や進行を遅らせることが可能だということが分かってきました。
脳が健康な状態から認知症の発症に至るまでの間には「前段階」があると考えられています。例えば、「周りの人が気付くほどではないけれど、軽い物忘れなど自分だけが異変に気付く」「仕事や家事で物忘れやミスが増え、周囲の人が徐々に気付き始める」などといった段階です。こうした時期を中心に、年齢では40代や50代くらいから、何らかの手を打っていけば、発症や進行を遅らせることが可能だと考えられています。
それでは、具体的に何をすれば予防につながるのでしょうか。最新の研究から、認知症の危険因子が分かってきました。世界をリードする認知症の専門家の研究によると、認知症の40%ほどは改善可能な12の危険因子により発症しており、それらの危険因子を改善することで認知症のおよそ40%が予防可能としています。その認知症の予防でポイントとなる12の危険因子とは、45歳未満では「教育不足」、45~65歳では「聴力低下」「頭部外傷」「肥満」「高血圧」「過度の飲酒」、66歳以上では「抑うつ」「社会的孤立」「喫煙」「糖尿病」「運動不足」「大気汚染」とされています。

例えば、肥満や高血圧の人は、そうでない人に比べて認知症を発症するリスクが1.6倍となり、糖尿病の人は1.5倍となっています。さらに聴力低下や抑うつ、社会的孤立はコミュニケーションが低下することなどで、リスクが高まるといわれています。認知症の要因はこれ以外にもいくつかあり、そのすべてを予防することは難しいですが、これらの要因を改善していけば、認知症の発症や進行を遅らせられる可能性があると考えられています。
12の危険因子のうち、予期しにくいものや環境的なものを除くと、主に生活習慣に関わるものです。肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、血管にダメージを与え、脳に悪影響を与えることで認知症を発症すると考えられています。これらの生活習慣病については、生活習慣(特に食習慣)を改善して予防すること、あるいは病気が分かった時点で適切に治療することが、認知症予防において非常に重要です。また、過度の飲酒、喫煙も、脳に直接的なダメージを与えると考えられています。
認知症の発症の原因はまだまだ未解明なことも多いです。しかし、認知症の発症要因とされる肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の改善や、節酒、禁煙などはご自身でもある程度対応可能だと思います。認知症の予防には生活習慣の改善が不可欠なのです。
2023年12月23日号掲載
