前回は、認知症の予防において、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の改善や、節酒、禁煙が有効であることを述べました。今回はさらに詳しく認知症の予防について述べたいと思います。
まずは食習慣についてですが、認知症を来しやすい肥満・糖尿病の改善には「糖質制限」が有効と思われます。私は肥満症専門医として、日々肥満や糖尿病の患者さんを診ていますが、このような患者さんの大半が糖質を取り過ぎています。「締めの〇〇」や「甘いものは別腹」という言葉に代表されるように、取らなくても大丈夫なのに余計に食べてしまうものの大半が糖質です。しかも、一世代前とは異なり、冷暖房完備でのデスクワーク、車での移動、ネット通販など活動量の乏しい現代人にとって、エネルギー源にしかなり得ない糖質の取り過ぎは、体脂肪の蓄積や血糖値上昇につながり、肥満や糖尿病を招いてしまうのです。
また、ご飯などの主食が減ることで、おかずの味付けが薄くなるため、糖質制限は塩分制限もしやすくなり、高血圧の改善にもつながります。すなわち、認知症の予防に有効な食事療法は「糖質制限」なのです。「糖質制限」の詳細な内容が知りたい方は、私の著書である「ゼロから知りたい! 糖質の教科書」(西東社)をお読みいただければと思います。

たんぱく質バランスも認知症の予防には重要です。たんぱく質は、肉や魚、豆腐などの大豆製品に含まれています。現代人は肉を好んで食べる人が多く、バランスよく栄養を取るために魚や豆腐を積極的に食べるように心がける必要があります。魚には、脳に必要な栄養素であるDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、このオメガ3脂肪酸は脳の機能を高めてくれるため、認知症の予防に有用とされています。
また、適度な運動習慣は認知症の予防になることがこれまでの研究から明らかになっています。特に体を動かすときのエネルギーに酸素を利用する有酸素運動が認知症予防に良いと考えられています。具体的な有酸素運動とは、ウオーキング、ジョギング、サイクリング、エアロバイク、水泳などが挙げられます。また、無酸素運動である筋力トレーニングも認知症の予防につながることが分かっているため、有酸素運動と合わせて行うことがおすすめです。日常生活に運動習慣を取り入れることが認知症予防において大切です。
人とコミュニケーションを取ることによっても、脳の活性化が促され認知症予防を期待できるといわれています。人と話すことは、脳にとって良い刺激となるので、年齢を重ねても、仕事や趣味などを通じてほかの人と交流を持つことが重要です。
知的活動が認知機能予防になることも、これまでの研究で報告されています。知的活動には、パズルやゲーム、楽器演奏、学習などが挙げられます。また、料理や農作業も、手先と頭を同時に使うため認知症予防に良いと考えられています。そのほかにも日記を書く、本を読む、絵を描くなども知的活動にあたります。認知症の予防のためにも、無理なく楽しく続けられる知的活動を探してみましょう。
十分な睡眠や昼寝が認知症の予防につながることも研究で明らかになっています。脳の中に不要な老廃物がたまってしまうと、認知症の原因になることがあります。十分な睡眠を取ることで寝ている間に脳の中の不要な老廃物が排出され、認知症の予防効果を期待できると考えられています。しかし、ただ寝れば良いというわけではなく、質の良い睡眠を取ることが大切です。
将来の認知症を予防するために、上記の内容をぜひ日常生活に取り入れていただければと思います。
2024年1月27日号掲載
