肥満症に類似した言葉として、「メタボリック症候群」という言葉があり、「メタボ」という略称で呼ばれています。よくみなさんも太っている不健康そうな人のことを「メタボ」と言ったりしているのではないでしょうか。

ところが、ダイエット外来を受診された人に「メタボって、どういう意味か知っていますか」と聞いても、まともに答えられる人はほぼゼロです。それどころか、医療のプロである医師を含めた医療者ですら、メタボリック症候群を分かりやすく説明できる人は多くありません。
まず読者のみなさんには、メタボリック症候群の日本語での別名を知っていただければと思います。メタボリック症候群は、日本語で「内臓脂肪症候群」といいます。要は、メタボとは内臓脂肪が多い人のことをいうのです。
内臓脂肪がたまると、糖尿病や高血圧、脂質異常症などを引き起こしやすく、それらが重複するほど、動脈硬化を進行させ、脳卒中や心臓病の危険が高まるという考え方に基づき、1999年に世界保健機関(WHO)は、このような病態をメタボリック症候群と命名しました。
前回述べましたが、内臓脂肪が蓄積すると、糖尿病、高血圧、脂質異常症以外にも、高尿酸血症、心筋梗塞、脳梗塞、脂肪肝、月経異常・不妊、睡眠時無呼吸症候群、整形外科的疾患、肥満関連腎臓病、さまざまながん、認知症、逆流性食道炎、胆石症など万病を引き起こしてしまいます。
これらの持病が一つでもある人は、内臓脂肪が多いかもしれません。このメタボリック症候群(内臓脂肪症候群)は2006年の時点で予備群を含めると2000万人が該当するといわれており、現在ではもっと増加しているものと思われます。
メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)は、ウエスト周囲径が男性85センチ以上、女性90センチ以上が基準となります。なぜ、このウエスト周囲径の数値が重視されているのでしょうか。この男性85センチ、女性90センチのウエスト周囲径は、統計学的に腹部CTによる内臓脂肪面積値100平方センチメートルに相当するためです。内臓脂肪面積値が100平方センチメートルを超えると、有意に先ほど述べましたような病気にかかりやすくなることが立証されており、一般の病院やクリニックでは腹部CTによる内臓脂肪面積の測定が困難なことが多いことから、ウエスト周囲径で代用されているのです。
しかし、このウエスト周囲径で内臓脂肪蓄積を類推するのは問題があります。例えば、特に女性は皮下脂肪蓄積が多くてウエスト周囲径が大きい人も数多くいますし、筋トレを熱心に行っていて、腹筋や背筋などが発達することでウエスト周囲径が大きくなる人もいるので、必ずしもウエスト周囲径が内臓脂肪蓄積を反映しているとは言えません。
最近では、ウエスト周囲径よりも、体型指数(A Body Shape Index :ABSI=ウエスト周囲径÷BMIの3分の2×身長の2分の1)の方が内臓脂肪蓄積をより反映しているという研究報告がみられます。しかし、この体型指数も、体の中身(体脂肪)を描出する腹部CTによる内臓脂肪面積測定ほど正確に内臓脂肪蓄積を表しません。
それでは、家庭用体脂肪計などでも使われている体脂肪率計測はいかがでしょうか。これは脂肪が筋肉に比べて電気を流しにくい性質を利用して、体脂肪率や内臓脂肪を測定する方法ですが、現在の技術では正確に内臓脂肪量を測定することは困難であり、誤差が大きく、あくまで目安とすべきと考えます。
以上のように、ご自身の内臓脂肪量を正確に把握するには、ぜひ一度、内臓脂肪測定の腹部CT検査を受けることをおすすめします。外見では同じように見えても、内臓脂肪量は千差万別です。そして内臓脂肪が多い人が健康寿命を延ばすためには、内臓脂肪を減らすような生活習慣(特に食習慣)の改善が不可欠なのです。
2024年7月27日号掲載
