前回は異所性脂肪について述べました。今回は異所性脂肪の代表格「脂肪肝」について詳しく解説していきます。健康診断や人間ドックを受けられている人の中には、脂肪肝を指摘されている人も多数いらっしゃるのではないでしょうか。
肝臓の病気は以前、アルコールの飲み過ぎによる肝炎か、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎がほとんどでした。しかし近年、アルコールをそれほど飲まず、肝炎ウイルスにも感染していない人の中にも、脂肪肝から肝炎(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患:MASLD)をおこす人が急速に増加してきています。脂肪肝の最も重要な原因は肥満であり、内臓脂肪量と肝臓の脂肪量は大きく関係し、正の相関を示します。

脂肪肝とは肝臓に脂肪がたまり、フォアグラ状態になることをいいます。日本人男性の3~4割、女性の1~2割が脂肪肝を有しているといわれており、「肝臓病の現代病」とも呼ばれています。脂肪肝は肝臓全体の5%以上に脂肪が沈着した状態をいいます。糖質などの過食や大量飲酒により、摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪になりますが、処理されなかった中性脂肪はどんどん肝臓にたまっていき、脂肪肝になってしまうのです。内臓脂肪の蓄積と同じ流れのため、内臓脂肪が多い人は脂肪肝を合併していることが多いです。
また、肥満がなくても内臓脂肪過多の人は、脂肪肝を合併していることが多く、そのような人のほとんどは筋肉量も低下しています。特に女性は筋肉の脂肪化も進んでおり、筋力も低下してしまっています。
さらに、最近の研究では、遺伝的な原因から、肥満がなく内臓脂肪も蓄積していないにもかかわらず、脂肪肝を合併している人もいます。このような人は、肝臓の細胞の中の、脂肪を処理する機能において重要な働きをしているPNPLA3という遺伝子が変異していると考えられています。日本人でPNPLA3遺伝子に変異のある人の割合は約20%と推定されており、日本人における非肥満の脂肪肝が多い理由の一つといわれています。
脂肪肝がある人の中には、たまった脂肪によって持続的に肝臓に炎症が起こり、線維化という変性を起こす人がいます。そうすると、肝臓が硬く変性する肝硬変という病気になります。皆さんの中には、肝硬変は恐ろしい病気と知っている人もいるのではないでしょうか。そして肝硬変は肝がんを合併することもあります。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、かなり肝硬変が進行しないと症状が出ませんが、いざ症状が出ると悲惨です。肝硬変では肝臓が硬くなっているため、肝臓に行くはずの血液が食道側に迂回してしまい、食道静脈が怒張し、破裂して吐血してしまったり、おなかに水がたまってパンパンに張ってしまったりします。そしてさまざまな症状に苦しみながら亡くなってしまうのです。
私は脂肪肝が原因で肝硬変になってしまった人を何人も看取ってきました。そのほとんどが、「こんなことになるなら、もっと早く生活習慣を改善したのに」と後悔の念を口にしました。しかし、肝硬変末期の状態になってから、生活習慣を正しても肝機能は改善しません。脂肪肝を軽く考えている人もいますが、脂肪肝が進行して肝硬変や肝がんとなっては手遅れで、不幸の転帰をたどる人も少なくありません。
脂肪肝は腹部エコーで比較的簡単に診断が可能ですので毎年の検査をおすすめします。そして、脂肪肝がある場合は、糖質制限を実践し過度の飲酒を控えることが急務です。肝臓の脂肪は、実は内臓脂肪や皮下脂肪よりも落としやすく、少しの努力で改善します。脂肪肝は早い段階で糖質過剰摂取や多量飲酒などの悪い生活習慣を改善すれば治る病気なのです。
2025年4月26日号掲載
